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大人のお稽古

貴人のための究極の武術 正宗太極拳を習う 気のエネルギーが身体を変える

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レッスンスタート

身体を「気」を出しやすい状態にするため
抜筋骨と気功でウォーミングアップ

太極拳の基本は、体の力を抜くこと。そのため、レッスンは抜筋骨(ばっきんこつ)という独自の準備体操からスタート。腕を大きく揺らしたりしながら、普段、意識はしていないけれど、筋肉や関節にかかっている無駄な力を抜いていく。

抜筋骨をおこない身体がゆるんだら、今度は気功で、誰もが持っている生体エネルギーの「気」を出しやすい状態に持っていく。「気」は手から多く放出されるので、手のひらをやや丸めて、型によって腕を上下させたりしながら、わずかな「気」をだんだんと高め、全身の気の流れをよくしていく。気功の後半になると生徒たちの手のひらが紅潮してくるのが見てとれる。

「太極拳で使うのは力のエネルギーとはまったく違う気のエネルギー。気血の流れがよくなりますから体内のバランスが理想的な状態になり、筋肉の質が変わるとともに五臓六腑の機能も高めます。太極拳は内臓まで鍛えられる武術なのです」(地曳老師)

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手のひらの角度をわずかに変えるだけで「気」の流れがぐんとよくなる。中里さんも「気」を集める感じをつかみ始めた。
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気功をしていると、手と手の間の空気がじんわり温まってくる。
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中里さんコメント

太極拳の武術クラスでは言葉での説明は少ししかありません。頭で理解するのではなく、身体で感じろってことなんでしょう。習い始めて間もないころは、「気」の存在については半信半疑だったんですが、最近では「もしかしたら、気という生体エネルギーは実在するのかも…」と、思えてきました。なぜかというと、気功をしていると身体の中の流れがスムーズになるような気がするんです。

レベルにあわせて型の個別指導

毎回、順を追って2つ、3つの新しい型を学び
1年間かけて、99ある正宗太極拳の型を習得する

ウォーミングアップが終わると、先生が「今日は何番からですか?」と聞いてくれます。本日の中里さんは39番の型からスタート。まずは先生が脇についてお手本を示し、中里さんが、それを見よう見まねで動きを習得していく。

「動きの一つひとつに攻撃や防御の意味があるのですが、まずは正しい型を身体で覚えることが重要なんです」と先生。腕の位置、曲げる角度、重心のおきかたなど事細かに指導するのは、先生たちの頭の中に「こういう攻撃には10番の型で受ける」といった映像イメージがはっきりあるから。太極拳は「気」と技で戦う拳法なので、「気」を集めやすい型を身体に覚え込ませると、非力な女性やお年寄りでも一瞬にして相手から身を護ることができる。また、「気」を集めやすい身体になると、体内バランスが改善されるので健康と美容にも効果抜群なのだ。

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道場のあちこちに99の型の順番が書かれた紙が張ってある。この紙を見ながら、順番に習っていく。
どこにも力が入っておらず、おだやかで優雅な雰囲気の先生の型に比べると、中里さんは肩や脚に無駄な緊張があることがわかる。だが、頭ではわかっていても、力は簡単には抜けないものなのだ。

中里さんコメント

去年の8月から通い始めて、今日でようやく41番目の型。先生たちからは「先へ先へと焦らずに自分のペースで型を習得しなさい」と言われるけれど、なかなか達観できなくて、もっと先へ進みたくなってしまうんですよね。

一般的なスポーツは、人より少しでも早く上達して、相手を打ち負かすことが醍醐味だけど、太極拳って本当に何もかもが他のスポーツとは違うんです。力を入れるんではなく、いかに力を抜けるかが上達のポイントですし。でも、人と競り合わないからストレスを感じず、いつでも、どこでも、一人でできるから、僕らの世代にぴったりだと思います。

人対人で組み手や護身の実践的な練習

相手の手と自分の手を離さず、推手の練習
上級者になればなるほど、攻撃をしかけてくる瞬間が読めない

推手(すいしゅ)とは、いわば組み手。腕と腕、手と手などをかすかに触れさせた状態で、八の字や楕円状に動かしつつ、相手のスキをみて攻撃をしかける練習だ。175センチある中里さんだが、たとえ相手が160センチに満たない女性であっても、上級者にはあっという間に負けてしまう。これが、太極拳が体格で不利な人に最適な護身術といわれるゆえん。

「中国の皇帝や貴人たちは、いつなんどき暴漢に襲われるとも限りません。力対力の武術だと体格が大きく、筋力のある人が断然有利ですが、気で相手を倒す太極拳では体格差は関係ありません。だからこそ、貴人のための究極の武術として伝承されてきたのです」(地曳老師)

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クラスの仲間と代わる代わる推手。地曳老師は生徒の間をゆるゆると歩きながら、相手を務める。そのたびに、生徒たちは一瞬にしてバランスを崩し、後方に吹き飛ばされたり、足下に崩れ落ちたり…。

中里さんコメント

推手の数を重ねていくと、僕ぐらいのレベルでも相手が初心者だと攻撃が読めるようになるんです。攻撃をしかける瞬間に力が入るのがわかりますからね。けれど、上級者になるとまったく読めない。以前、上級者の女性と組んだときに、一瞬にして吹っ飛ばされてしまって唖然(あぜん)としたことがありました。地曳老師に推手を手合わせいただくときなんて、もっと摩訶不思議(まかふしぎ)。軽い衝撃なのに、何か別の力でいきなり体を持っていかれるような感じがするんです。

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