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大人のお稽古

ヨーロッパの倫理思想をじっくり読み解く 「善」とは何かを考える哲学講座 カントは今もなお、我々に生きる知恵をもたらす

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いよいよ講義開始

「カントが我々に言いたかったことは何か?」
軸足がぶれないように、おさらいをしてから講読開始

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答えが書けない回もある。けれど、理解できない自分を認めることが、もっと知りたい、学びたいという意欲に火をつける。

講義がスタートすると、手なれた様子で参加者に白紙のカードが配られ、竹田先生がよく響く声で問題を読み上げた。

「カントによる実践理性のアンチノミーとは何か?」

いきなりの小テストにもかかわらず、参加者は動じることなく、カードに答えを書き、3分ほどでカードを回収。その後、先生からそれぞれ、「徳福一致はありえない」という正解の発表と丁寧な解説がなされる。

いきなりテストと聞くとドキっとするが、これもカントの倫理学への理解を深めるための手法の一つ。今回の講義の鍵となる文章を理解し、頭にたたき込んでおくと、これからの授業内容がよりわかりやすくなるのだ。さらに、テストの後は前回のおさらいのレジメが配られ、記憶を新たにしてから新章を読み進めていく。

両先生は、常に「カントは我々に何を言いたかったのか?」を振り返りながら講義を進める。そのため哲学書にありがちな難解な言葉や言い回しばかりに気をとらわれることなく、常に理解するべき本質を外さずにすむ。

磯岡さんコメント

テストといったって、学生時代のそれとは違い、単位や成績に関係ないからプレッシャーはありませんね。むしろ、自分がどれくらい理解しているかを確認できるので、テストを受けるのが楽しみなくらい。昨年はハイデガーの講読で、その期のテストで僕は全問正解だったんですよ。それで、先生方から記念品にシャープペンシルをもらいました。このペンは僕の宝物。いつも筆入れに入れています。

参加者がレジメを発表

一章ごとに担当を決め、精読してレジメをもとに発表
疑問や意見が次から次に出て、議論が白熱

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前に出て、レジメをもとに発表。先生と並ぶので、発表が終わった後にいちばん聞きたかった質問をぶつけられるのが、発表者を務める役得。
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気鋭の哲学者ふたりがそろっての講義とは、なんともゼイタク。

「レジメを切る」…ゼミナールの経験がある人には、懐かしいフレーズではなかろうか。この哲学講義でも、章ごとに担当者を決め、レジメを切り、全員の前で発表する。発表が終わると、先生が解説。それが終わると、あちこちで一斉に手が挙がる。磯岡さんもその1人。

磯岡さん:「ヘーゲルまでは神が存在していたわけですが、カントの時代はどうとらえられていたのでしょう。より、神の存在が強固だったように思いますが…」

竹田先生:「カントの時代は、カトリックとプロテスタントの争いがあり、キリスト教の地位が崩壊しかかっていました。そこで、カントは善悪を宗教的なものから切り離そうとしたんです。人間は弱い存在なので、 いつも正しく行動できるわけではないが、そうできるように努力しなければならないと、カントは説くわけです。カントがそうだったように、神的存在をどう規定するか で、すべての哲学者は苦労してきました」

すると、すかさず西先生がつっこむ。

「どう行動するかについての解釈は微妙ですね。カントはそこまではっきりとは書いていませんから。どうなんでしょう、竹田先生?」

気鋭の哲学者同士が、意見をぶつけ合い、解釈を深めていく様子を間近に見ると、思考の方法がひしひしと伝わってくる。ふたりの対話に参加できるというのも、この講義の醍醐味(だいごみ)のひとつ。

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竹田先生はカントの考えた世界観を「地球をどう見ているか」の、わかりやすいイラストで説明。ビジュアルからの理解は、ときに言語からの理解を上回る。

磯岡さんコメント

僕は理系の大学院を卒業してエンジニアになりましたから、これまで自然科学一本槍で来たわけです。哲学の講義に参加して、人間の精神を対象とする哲学がいかに僕の知的好奇心を刺激するかがわかりました。数式では表せないけれど、たてられた問いに対して、言語を用いて緻密(ちみつ)に論理を展開しながら、それを解いていく。これがいいんです。哲学とは、より確かな答えに迫っていく方法なんですね。

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