お稽古は約2時間。普段は師匠にネタを見てもらいたい人が披露し、いろいろアドバイスを受けることからスタートする。だが今回は、三遊会の発表会となっている「中央区ブーケ祭り」での、それぞれの反省会がまず行われた。稽古を重ねてのぞんだけれど、中には途中がすっぽり抜けてしまった人も…。
「みなさん前半はしっかり噺を覚えているけれど、どうしても後半が弱い。でも、噺が途中で飛んじゃっても、いいんです。お客さんのノリに合わせて、そのまま、続けちゃいましょう。落語で一番大事なのはオチ。そこでお客さんに楽しんでもらわないと」
お客さんの気持ちをどうつかむか、どう楽しませるかをわかっている師匠だから、噺を覚えるだけではなく、高座への心構えも教えてもらえる。
この日、平井さんは、退職後、真っ先に覚えた「時そば」を披露。繰り返し稽古をつけてもらうことで、ネタの完成度を高めていく。見せ場のそばを食べるところにさしかかると、師匠が「待った!」をかけた。
「左手をそんなに上下させたら、そばのどんぶりを持っているようには見えなくなっちゃいますね」
まず平井さんのそばを食べるしぐさを真似してみせる師匠。確かに、どんぶりを持つ手が上下に大きく動くと、中身が入っていないように見える。
「左手をあまり動かさずに、右手でそばをたぐる仕草をすると、うまそうに食べている感じがでます。もう一つ、しぐさの重要な役割は、場面転換。顔を左右どちらに振るか、あるいは姿勢や声色をどう使いわけるかで、お客さんに登場人物のキャラクターをイメージさせるんです」
平井さんコメント
私がお稽古に通う一番の目的は、しぐさのお手本を見せてもらうことです。落語でおなじみの登場人物には八つぁんやご隠居、小僧などがいるけれど、どうやったらそのキャラクターらしくなるかが、今、一番わからないこと。師匠のお手本を見たり、アドバイスをもらうと、それだけで落語が生き生きしてくるんです。
圓王師匠による、落語の仕草のお手本
小僧
和尚
八つぁん

今回のお稽古では、仲間の三遊亭王妃さんも「寿限無」を披露。師匠の独演会、「圓王百席」の前座に出させてもらうので、稽古にも熱が入る。「寿限無寿限無…」とおなじみのフレーズを快調に飛ばしていたが、ここでもしぐさについて師匠から指導が入った。
「近所の子供の頭をなでるとき、ちょっと不自然ですね。子供の頭はそんなには大きくないでしょう」
落語は長い時間をかけて、完成されてきた芸事。しぐさや話し方にも、そういう演じ方になったのには理由がある。そういう芸事の歴史や背景の話を聞けるのも、プロに教わるだいご味の一つだ。
平井さんコメント
仲間の噺を聞くのは、毎回、気づきがあるのでとても参考になります。王妃さんの女性ならではのしぐさが勉強になりました。また、人によって間が違いますから、自分の間と比べながら、「次はこうしてみよう…」なんて、考えています。
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平井さんコメント
だんだん噺ができるようになるのも楽しいけれど、発表の場があるともっと楽しくなるんです。披露して、お客さんに喜んでもらって、さらにほめられたりすると、自信に変わっていくんですね。何かアウトプットできるものがあると、第2の人生が充実したものになると思います。私にとっては、それが落語なんですね。