レッスンのスタートでは25mプールを10往復ほど水中ウオーキング。先生とおしゃべりしながら、実に楽しそうな様子。けれど、上達に熱心な伊藤さんは、ただ歩くだけでなく、大きく腕を使い、水をつかむ感触を確かめていた。その他、後ろ歩き、横歩きなど、歩き方を変えながらウオーミングアップ。実は、このプロセスには別な目的も。
「伊藤さんは、まだ水への恐怖心を克服しきれていないので、楽しく話をしながら歩くことで、早く水に慣れてもらうためでもあるんです」と、コーチ。
美しいフォームで泳ぐために一番大切なのが、正しいけのびができるかどうか。プールの壁を足でけって、すぅーっと水中を進んでいく。浮かび上がったとき、頭、背中の上部、おしり、かかとの4点が水面に出ているのがベストなフォーム。
伊藤さんのフォームはとてもきれいだが、最後のほうになると右に曲がっていく。ここが解決したいところだ。
「体幹部(胴体)がしっかりしていると、けのびでまっすぐ進みます。でも、どちらかに傾いたままだと曲がっていってしまう。伊藤さんの場合、利き足のほうがける力が強く、スタートから若干体幹部が傾いているので、まっすぐ進まないんです」と、コーチ。
まっすぐに進むけのびのフォームを体感するため、コーチに足を押し出してもらいながら、プールを何往復もする。
伊藤さんコメント
けのびで何の抵抗もなく、すぅーっと進めたときは本当に気持ちがいいですね。コーチのレッスンでは、これまで習ってきたことを復習してから新しいステップに進むので、安心なんです。基礎が一つひとつ積み重なって、初めて泳げるようになるんだと実感しています。
この日の重点課題はキックターンだった。壁にタッチをし、体を引き寄せ、ターンする一連の動作を繰り返す。個人レッスンの良いところは、苦手なことを重点的に何度も教えてもらえるところだ。興味深かったのが、2〜3回、キックターンの練習をした後、コーチは伊藤さんを立たせ、水中でジャンプをさせた。
「床をける感覚はターンで壁をけるのと同じ感覚。この感覚がつかめると、推進力を利用して壁面に体を寄せ、力をためてけることができようになります」と、先生。
この練習をした後、伊藤さんのターンは見違えるようになった。「ターンするのが、まだまだ怖いんです」という伊藤さんに、コーチがひと言。
「ターンは大きく息継ぎができるから、次の25mを泳ぐのが楽になるんです。ターンするのを待ち望むくらいじゃないと(笑い)」。やさしいけれど、はっきりと伊藤さんが次に進むべきステップを示唆するコーチだった。
キックターンの流れ


伊藤さんコメント
最後のほうのキックターンは、自分で良い出来だったと思います。何度も繰り返して練習するうちに、どのタイミングでどう体を動かせばいいのかが、だんだんとわかってきました。これがマンツーマンのレッスンの良いところですね。
レッスンの最後はクロールで50mを泳ぎ切ること。4年前までは、顔を水につけることすらできなかった伊藤さんだが、大きなストロークと推進力でなかなかの泳ぎっぷり。
「息継ぎは頭を上げて吸うんじゃないんですよ。体幹部のローリングを使って、真横を見るようにしてください」と、コーチから要所要所でアドバイスが入る。
見事に50mを泳ぎ切った伊藤さん。「苦しくて……」と言うが、フォームが見事なので、楽々と泳いでいるように見えた。特に、水を掻ききった後の腕のフォームが鳥の翼のように美しい。大人になってから始めた水泳なのに、悪い癖がつかず、まさに水泳教本のお手本のようなフォームを身につけつつある。
伊藤さんコメント
コーチが泳ぐ姿は、まるで飛び立つ白鳥のように美しいんです。「あんな風になりたいな」とイメージしながら泳いでいますが、まだまだです。でも、身近に良いお手本がいると、正しいフォームが何かわかるから、金づちだった私でさえ泳げるようになったのだと思います。

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伊藤さんコメント
水泳が上達するのも楽しいんですが、先生とのおしゃべりも大好き。コーチのほがらかな笑顔を見ながら歩いていると、緊張していた体がほぐれるような気がします。