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新たなランドマークに美術館が次々と誕生したり、海外オークションで日本の美術作品が高額で落札されたりするなど、美術の話題に触れる機会が多くなっています。特に、一大ブームを巻き起こした伊藤若冲や、狩野永徳の大回顧展などをきっかけに、日本美術への関心が高まっています。
美術の楽しみ方は様々ですが、もっと身近に美術を感じるにはどうしたらよいかを、日本美術史研究者の山下裕二さんに伺いました。
――日本美術の人気が高まっていますが、その一方で、まだまだ「難しい」「堅苦しい」と感じている方も多いと思うのですが。
何も難しいことはありません。とにかく見ればいいんです。美術はパッと見た時の印象が大事。美術館に行くと、きちんと順路通りに見てまわる人が多いけれど、本来、どの作品から見始めたっていいのですから、会場に入ったら、まずは買い物をするようなつもりで、全体をぐるっと早足に回ってみる。それで気になる作品からじっくり見ていけばいいと思います。はじめはキャプションも読まないで絵だけをじっくり見て、後から描かれた年代や技法、歴史的背景といった説明を読むといいですね。
見ることと知ることは別物です。何かを知るために展覧会に行く人がいるけれど、知ることは見た後でいい。作品を見ることは、料理を食べることに似ています。料理を食べる時、能書きを読んでから食べるのはいかがなものでしょうか。いくら一流の料亭といわれている店でも、出された料理がまずければ、僕らは五感で「まずい」と感じますし、それが本当に味わうということ。何でも実際に食べてみないとわからないですよね。美術もまずは味わってみることです。

日本美術には「国宝」や「重要文化財」など、国によって定められた価値基準がありますが、それとは別に、見る人が勝手に判定を下して楽しんでもいいんです。例えば「自分がお金を出して買うなら、どの作品がいいか」という視点で見てみると、美術がより身近に感じられます。
――自分の感覚を信じて見る、ということですね。
そうです。服を選ぶ時だって、まずは感覚的に見るでしょう。それと同じです。絵を趣味や好みで見ることは良くない、と思い込んでいる人がいるけれど、そうじゃない。僕からいわせれば、それこそが一番正しい見方なんです。
「対決−巨匠たちの日本美術」展では、二人の美術家を対決させながら作品を展示しています。こういった展覧会では、どちらが勝ちか、見る人が勝敗を決めて楽しめばいい。ここでは、実にいろんな組み合わせの対決が実現しているんですね。同時代にライバル関係だった作家もいれば、時代は違うけれども作風が通じ合っている作家、師匠と弟子の対決もあります。
時代や作風の違う作品が一同に介した展覧会は、自分はどんな作家が好きなのか、どんな作風にひかれるのかを見極める良い機会にもなります。
――作品を対決させることで、自分の好みもはっきりするわけですね。もし山下さんが対決させるとしたら、どんな芸術家を選びますか。
そうだなあ…千利休とマルセル・デュシャン(※1)かな。利休はお茶を通して、20世紀の美術家がやろうとしたことをすべてやっています。茶室の空間はインスタレーション(※2)だし、真っ黒なお茶わんを使うのはコンセプチュアルアート(※3)だしね。一方で、既存の美術概念を塗り替えたデュシャンは、20世紀の現代美術のもとをつくったような人。ぜひともこの二人を対決させたいですね。
あと、明治以後の日本美術で、世界的な評価を得た数少ない美術家である藤田嗣冶(※4)と村上隆(※5)の対決とか、岡本太郎と縄文人の対決も見てみたい。時空を超えた対決、なかなか良い勝負になると思いますよ。

(インタビュー:千葉弓子)
※1マルセル・デュシャン 20世紀の前衛美術家。代表作は既製品を作品化した「レディメイド」シリーズ
※2インスタレーション オブジェや装置を用いて、空間全体を作品として体験させる表現手法
※3コンセプチュアルアート アイデアやコンセプトを核とし、物質的側面より観念的側面を重視した表現手法
※4藤田嗣治 フランスで活躍した日本人画家。「乳白色の肌」と呼ばれた画法が特徴
※5村上隆 ルイ・ヴィトンとのコラボレーションや、サブカルチャーをモチーフにした作品で世界的に注目を集める現代美術家
「対決−巨匠たちの日本美術」展の中で僕が特に注目しているのは"狩野永徳 対 長谷川等伯"です。二人は同時代のライバル同士。等伯の松林図屏風は、日本美術の中でも人気ナンバーワンといっていいくらいの作品で、それがライバルである永徳の大作と並ぶのですから、必見です。これは、なかなか見られない対決です。

(画:山口 晃)
1958年広島県生まれ。東京大学文学部美術史学科卒業、同大学院修了。日本美術史研究者。明治学院大学教授。93年、論文『夏珪と室町水墨画』で国華賞受賞。専門は室町時代の水墨画だが、縄文から現代まで幅広く研究を重ねる。主な著書は『室町絵画の残像』『岡本太郎宣言』『日本美術の二○世紀』など。赤瀬川原平氏と共に「日本美術応援団」を結成し、独自の活動も展開中。共著に『日本美術応援団』『日本美術観光団』『実業美術館』などがある。
創刊記念「國華」120周年・朝日新聞130周年 特別展
| 会期 | 2008年7月8日(火)〜8月17日(日) | |
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| 開館時間 | 午前9時30分〜午後5時
※金曜日は午後8時まで、土曜・日曜・祝日は午後6時まで開館 ※入館は閉館の30分前まで |
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| 休館日 | 月曜日
※7月21日(月・祝)は開館、翌22日(火)休館。8月11日(月)は開館 |
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| 会場 | 東京国立博物館 平成館 〒110-8712 東京都台東区上野公園13-9 |
主催:東京国立博物館、國華社、朝日新聞社
後援:文化庁
特別協賛:DIAMアセットマネジメント株式会社
協賛:三井物産株式会社 トヨタ自動車株式会社 大日本印刷株式会社
協力:東京美術倶楽部 日本航空

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