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ことばが紡ぐ旅

航空書簡 from 奄美大島 to ヨーロッパ・アルプス -いのちの輝き- 朝崎郁恵さんがつづる島唄

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ウガミショーレ

「ウガミショーレ」とは、奄美の古い挨拶(あいさつ)です。「拝み候」がなまったものだと言われていますが、相手を敬う気持ちで口にする、出合い頭の挨拶。

今日は、こんな深い言葉をもつ奄美の島唄(うた)のお話をさせていただこうと思います。

私が生まれ育ったのは、奄美大島の南に浮かぶ、加計呂麻(かけろま)という名の島。

私の家は、寄せては返す波の音が聞こえる、浜にごく近いところにありました。浜への道には原色の実をつけたアダンの林があり、通り抜けるとすぐに眩(まぶ)しいほど鮮やかな海が広がります。

奄美では山や海や道、あらゆる自然のなかに神がいるとされています。旧暦8月15、16日や旧暦の10月などには大きな祭事があり、神を降ろす女性たちのカミウタ(神唄)が、集落に響き渡りました。裏声を使ったその唄は、子供心にも切なく物悲しく心に響きました。

一方で、我が家では夜になると、いつも父が三味線をひき、母が唄い踊っていました。これを聴きつけた近所の人たちが集まり、唄遊びを繰り広げるのも常でした。生活のなかには「カミウタ」があり、父母の唄があり、これが私の「奄美の島唄」の原点なんですね。

島唄はまた、歴史を生きた人々の想(おも)いを伝えるものでもあります。薩摩に支配された時代があり、琉球王朝の時代があり、その前には平家の人々の時代があり。牛か馬のようにサトウキビを生産させられた時代には、うめき声とともに唄が生まれ、平家の時代には「大和から来たあのきれいな人たちは、どういう生まれをしたのでしょう」「私たちに読みかけを教え、いろんなことを教えてくれた」と唄われました。薩摩の支配時代に、奄美の歴史はいったん消却されました。でも、唄だけは薩摩も奪えなかった。ご先祖さまは、唄に言霊(ことだま)を織り込んで、その歴史や想いを残してくれたんです。

25歳で島を出てからも、私は一貫して島唄を唄い続けてきました。25歳までに私の中にすでにぎゅうぎゅう詰めになっていたんですね、「島」も「島唄」も。

時代が変わり、奄美の風景も変わり、祭事も現代人に合わせて日曜日に行われるようになりました。それでも、「奄美はどんなところ?」と訊(き)かれると、私は必ずこう答えます。

「まず、行ってみてください」

深い山の緑、強い日光、一日の間で紺碧(こんぺき)から紫、ときにはピンクにも色が変わる海、陰影の濃い島の時間をただじーっと身を任せるように過ごして、お年寄りの話に耳を傾ける。きっと、島唄の生まれた奄美という地の原風景を実感いただけることと思います。

今井さまが歩かれるヨーロッパアルプスの自然は、奄美の色濃い自然とはまったく違う雄大さでしょう。ふたたびの機会に、ぜひ写真など拝見できればと願っております。

敬具

2007年2月28日

朝崎郁恵

今井通子さま

鮮やかな原色が妖艶(ようえん)なアダン。奄美に移り住み、奄美を描き続けた画家・田中一村の絵にも描かれている、奄美を象徴する植物です。

私が生まれた加計呂麻島の花富集落。花富集落は奄美大島からみると、島の裏側に位置します。山道を下ってくると、懐かしいこの集落の風景が広がります。

プロフィール

朝崎郁恵

1935年、奄美諸島の加計呂麻島生まれ、横浜在住。奄美諸島で歌い継がれてきた島唄の唄者(ウタシャ)。ニューヨーク、キューバなどの海外公演、国立劇場10年連続公演をはじめ、数々の伝説的なコンサートを開催。現在はピアノ、シタールなどの楽器とのコラボレーションを通じ「奄美の島唄」を唄い継いでいる。2006年12月、世界的に活躍するピアニスト、ウォン・ウィンツァンと2人で制作したミニアルバム「シマユムタ」発表。2007年1月、シタール奏者、ヨシダダイキチとコラボレート・アルバム「はまさき」発表。

http://www.asazakiikue.com/

奄美の魅力に触れる・感じる
朝崎郁恵さんがつづる島唄健康と長寿の島にふれる(2頁へ)
ヨーロッパアルプスの魅力に触れる・感じる
今井通子さんがつづるアルプスの魅力(1頁へ)癒しの温泉と山岳リゾートの休日(2頁へ)
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