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風流ことばあそび塾 篝火舎心亭監修

ことば遊びの世界へようこそ Vol.01 おや、おもしろいこと、おっしゃる

監修:篝火舎心亭 文:寿々乃舎於火女

「利口」ってコトバがありますね。岩波の国語辞典をみると「頭がよいこと。要領がよいこと。抜け目がないこと」と出ていて、「頭がよい」から「抜け目がない」へ、だんだん悪い意味になっていく。また、親が子どもに「お利口にしていなさい」などとも言います。この場合の「利口」は聞き分けがよいことでしょう。

ところが、同じ「利口」を、岩波の古語辞典でみるとまず、「口のきき方が巧妙なこと。口達者」とあり、次に「気のきいた戯(ざ)れ言。たくみなしゃれや冗談口」、最後に「かしこいこと。利発。怜悧(れいり)」となる。

つまり、われらが祖先、というか古語辞典の時代の日本人にとって、気のきいたことを言って話をおもしろくしちゃうヤツ、うまいしゃれや冗談を連発するヤツこそ、「利口」ってコトバにあう、かしこく利発なヤツだったわけです。

たとえば平安時代の「枕草子」は、清少納言の当意即妙集といっていいだろうし、ずっと下って芭蕉の俳諧の連歌、連句も、ルールにのっとって気のきいたことを言いあうこと、と定義したら、乱暴な矮小化との批判のことばも聞こえてきそうですが、そう外れてないと思う。最近のテレビタレントも、芸よりはオモシロイやりとりができるかどうかで決まるのではないかしら。

日本人は昔も今も、頓知や機知が大好きです。オモシロイことをいおうとして、いろんな努力をしてきました。ふだんからコトバという道具をためつすがめつし、表から裏から上から下から眺めたり、音だけを取りだしてあれこれ連想したり、意味を深く考えたり…。そうやってコトバの性能を試し、磨いた。そこで、多種多様なことばあそびが生まれ、伝わってきたのです。

「あたりまえだのクラッカー」っていうフレーズ、ご存じでしょう。前田製菓という会社が1960年代に流したコマーシャルですが、これは「無駄口(むだぐち)」という、昔からのことばあそびの一種。ひとつのことばからふたつの意味を引き出します。「あたりき、車力(しゃりき)、車引き」「おそれいりや(入谷)の鬼子母神」「びっくりしたや(下谷)の広徳寺」など、みな無駄口です。

こんなフレーズが会話のなかに出てきたら、どうですか。ちょっと外した効果、ゆとりが出てきて、まなじりを決した論争など続かないかもしれない。

まなじりを決すことの多い世の中、無駄な遊びもいいものです。いえ、脳の活性化という点では、このことばあそび、役に立たなくもないらしいのですが。

今週の重箱の隅

広徳寺

イメージ写真

「びっくりしたやの広徳寺」の広徳寺には、もう一つ、よく知られた無駄口があった。「どうしたもんだの広徳寺」。だが、今これを言う人はめったにいない。

「びっくりしたや(下谷)の広徳寺」のほうは、「おそれいりや(入谷)の鬼子母神」と対になったフレーズとして抵抗がない。入谷の鬼子母神は現存するから、広徳寺を知らなくても、下谷には広徳寺が今あるか、昔はあったのだろうと推測できるからだ。

もう一つの無駄口、「どうしたもんだの広徳寺」のいわれはこうだ。かつて、広徳寺の総門は、名人左甚五郎がひいた図面をもとに兄弟弟子がつくったが、間違えて図面より短くしてしまったとか、長くしてしまったとか。いずれにしても伝説。どちらが正しいかわからないが、この門は、江戸の人々に「寸法違いの門」として有名だったという。そこで、「どうしたもん(門)だの広徳寺」なのである。

この門の話を知らない人に「どうしたもんだの広徳寺」と言ってみても、「……???」になってしまう。

無駄口に限らず、ことばあそびを楽しむには、同じことを知っている、というベースが必要なのだ。知識というより、雑学。雑学は増やすべし。ただ、詳しすぎても他人には「どうしたもんだの広徳寺」になるので、要注意。

写真:江戸時代、広徳寺は、JR上野駅そばのいまの東京都台東区役所のあたりにあったが、関東大震災後、練馬区へ移転。跡に石碑が建てられている。

(更新日:2006年06月26日)

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