「あ、それ、洒落てますね」と言うのを聞いて、どんなシーンを思い浮かべます? たぶん、だれかが他人の何かをほめているところでしょう。 何を? 洋服やバッグ、靴など身につけているもの? それとも、読んでいる本や聞いている音楽? 噂のお店やショッピングモール? 家やインテリア? 料理? クルマ?
とにかく「洒落てる」って言葉、守備範囲が広い、万能ほめことばです。いや、ほめるだけじゃありません。「シャレたことをぬかすな」とくれば、「なまいき言うな、黙ってろ」ってことになっちゃいますからね。
さて、この万能ほめことばの「洒落」こそ、ことば遊びの世界においては、とにもかくにも核となるキーワード。
鈴木棠三さん(「ことば遊び辞典」)によると、洒落のルーツには二説あって、一つは「さらす」から来ているという説。洒落の「洒(さけではありません)」という字は、「晒(さらす)」の兄弟みたいなもので、水に「さらす」のが「洒」、日にさらすのが「晒」。洒落とは、あたかも日や水や風にさらされたように抽象的に洗いあげられ、洗練された状態を指すというわけです。ちなみに栖、哂も同系。もともと「西」はザルやかごを描いた象形文字です。
もう一つは「戯(ざ)れる」がルーツという説。戯れるには、ふざける、たわむれる、雅趣がある…といった意味がある。で、その戯れるがじゃれる⇒しゃれるになったという。こちらも洒落のルーツとして、捨てがたいものがあります。
いずれにしても、洒落は「近世町人の趣味生活・享楽生活のもっとも洗練された理想的境地を表す語で、はなはだ広い振幅を持って、また微妙なニュアンスをも伴って用いられた」のだそうです。「粋」や「通」も同じでしょう。
「近世町人」というのは、江戸時代の町人のことですが、この平成の世に始まる、<風流ことばあそび塾>でも、作品のよしあしは、洒落てるかどうかでほぼ決まります。 「洒落てる」ことに、万人受けは必ずしも必要ありません。一瞬に理解できて、覚えやすく、快い笑いを誘う、時と場所を心得た一言。これを洒落ていて結構、とします。「洒落」とはことばあそびの根っこにある美意識、というとかっこよすぎるかもしれませんが…。
もっと狭い意味では、洒落はことばの遊びかたのひとつです。たとえば、「廊下を歩いているうちに用を忘れた。ロウカ現象かな?」というような、これは洒落というよりは駄洒落ですが…。こんなことばの遊びが出てくるうちは、老化は進行しません。駄洒落でも何でも大いに楽しみましょう。
この<風流ことばあそび塾>では、「洒落附(しゃれづけ)」としてのルールを決めて、それに基づいて遊び、できばえを競い合います。7月19日に詳しくお話ししますので、ぜひご覧ください。
高利貸し=アイスクリーム

まずは、明治時代の作家、徳富蘆花が書いた「不如帰(ほととぎす)」の一節。
<世の中の事は概して江戸の敵(かたき)を長崎で討つものなり。在野黨(とう)の代議士今日議員に慷慨激烈(こうがいげきれつ)の演説をなして、盛んに政府を攻撃し玉ふ。至極結構なれども、實は其氣焔の一半は、昨夜宅にて散々に高利貸(アイスクリーム)を喫玉(くいたま)ひし鬱憤と聞いて知れば、ありがたみを半ば減ずる訳なり>
「高利貸」に「アイスクリーム」というルビが振られ、「喫」を「くい」と読む。前夜、高利貸しに責め立てられたことが、「さんざんにアイスクリームを食いたまいし」となるわけだ。
次の例は、同じく明治時代の売れっ子、尾崎紅葉の「金色夜叉」から。
「いや、然(そ)う言われると慄然(りつぜん)とするよ。實は、さっき停車場で例の「美人クリイム」(箇は美人の高利貸しを戯称せるなり)を見掛けたのだ」 「美人クリイム」とは化粧品のことかと思うと、紅葉自身が「美人の高利貸しを戯称」と注をつけている。
日本国語大辞典によると、高利貸しをアイスクリームとか、アイスと呼ぶのは、学生の隠語だったという。
高利貸→こうりがし→こおりがし→氷菓子→アイスクリーム(略してクリイム)、なるほど。
(更新日:2006年06月28日)
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