【風流ことばあそび塾】の選は三者で行ない、今回は龍門亭登鯉(りゅうもんていとうり)宗匠と紀久乃舎音火女(きくのやおとひめ)宗匠。そして私、篝火舎心亭(かがりやしんてい)が僭越(せんえつ)ながら立評(たてひょう)をつとめます。
立評というのは、選者が複数のときに、その会を代表する形で「選」をすることをいいます。この場合「選」といわずに「評」というからには、それなりの主張と責任をともないますが、個人的な美意識、趣味嗜好に左右されることも事実です。従って皆で選をする「互選(ごせん)」で高い点数をとったの高点句とは一致しないことが多く、それが立評を「立てる」理由でもあるわけです。
さて、今回、気づいた点をいくつかお話ししょう。
洒落附(しゃれづけ)の題は「飲み物に関する一切」でしたね。「に関する一切」というのは、「幅広く何もかも含みます」ということで、飲むもの、飲むことに関するものなら何でもいい。「意見」や「バリウム」、「湯飲み」、「盃」などすべて入ります。それが「一切附」の特色で、縛りがあってないようなものかもしれません。
洒落附は江戸時代からある種目です。これまで似たような題が何度も出ていますから、剽窃(ひょうせつ)や盗作でなくても、同じ句が何度も投句され、選ばれてしまっても不思議ではありません。これを「通り句」といいます。
今回もいくつか通り句がありました。たとえば「焼酎お見舞い申しあげます」、や「涙如来」など。洒落附としてよくできていますが、「どこかで見たような気がする」ということで採りにくい。「涙如来」は選びましたが、高い点数はさし上げられません。
また特に気をつけていただきたいのは、間違い、字違いです。私の選で「平場」の九に入っている、「十薬口に苦し」の「十薬」は、いただいた投句では「汁薬」になっていました。
もちろん、ふだんの生活でも字の間違いは困りますが、特にことば遊びでは、一つ一つのことばが遊びの鍵になりますから、字が違っていると鍵として働かなくなってしまうことがあります。笠附でも同様です。辞書や事典と仲良しになってください。
これもことば遊び全般にいえることですが、括弧(かっこ)や「!」「?」などの記号は、なるべく使わないこと。ことばだけで勝負したいですね。
また、漢字を使った方がよいか、それともひらがなで書いたほうがよいか、というような表記にも神経を使いたいものです。
もう一つの種目、ゆるみ笠附の題は「あれこれ○」でした。
笠附で手柄とされるのは「めっけもの」、「見つけもの」ということです。人がちょっと気がつかないことを「めっけ」て、「あれこれ」を頭に五七五にする。そして「そう言えばそうなんだよね」と共感を得られるのが、めっけものです。
ことば遊びの世界では、説明調の句は高い点数は取りにくいですね。句の情景を思い浮かべながら、ことばづかいと内容をもう一ひねりできないか、考えてみてください。
句ができたら、上下を入れ替えたり、ほかの表現をさがしてみたりすることも上達するコツです。
たとえば、「あれこれとお口達者なおままごと」という句がありましたが、中七と下五を入れ替えて「あれこれとままごとの子の口達者」としたらどうか。あるいは、「あれこれと噂があった立志伝」の「噂が」を「噂も」にして「あれこれと噂もあった立志伝」。また「あれこれとプチ整形す大女優」の「整形す」を「整形の」にして「あれこれとプチ整形の大女優」。このようにずいぶん印象が変わります。
いずれにしても「てにをは」を変えてみる、前後を入れ替えてみるなどの試みをおすすめします。
五七五や七七の場合、字余りはやむを得ないこともありますが、字足らずは、まずいけません。作ったものを、声に出して読んでみるとおわかりになるでしょう。
最後にもう一つ。【風流ことばあそび塾】の選は、高い順から、天・地・人・五客・七秀・平場となっています。この上位の天地人は「三彩」ともいい、ここには縁起の悪い物事、マイナスイメージの句が選ばれることは、ふつうありません。別の言い方をすれば、人の位のすぐ下の句は、そういう制約をはずせばもっとも高点句ということになるわけです。
ついでながら、「雲隠し」は「滑稽、お色気」といわれて、昔から珍重されました。ただし「生破礼(なまばれ)」を嫌います。
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