地口附には二つの形があります。一つは文章の構造、たとえば「あちら立てればこちらが立たず」なら、「……ならば……あらず」「……れば……ず」という、それが理由でこうなったという文章の構造をそのまま利用するスタイル。もう一つは語呂が非常によく合うという形。どちらも元の文句との関係があったほうがいい。語呂が合っているというだけ、文章の構造が合っているというだけではちょっと物足りなさを感じることがあります。
語呂を合わせる方法は二つあって、一つは母音が合う。もう一つはリズム感が合う。音と調子ですね。それで面白いことを考えたいところです。
今回は、同じ投句が目立ちました。「付き句」といいますが、たとえば、「お茶を点(た)てれば痺(しび)れて立てず」が二句。これ、一つだけなら、私は確実に天にしますね。二つあったので人の位ですが、今回の中で一番いいと思います。
そのほかの、付き句を紹介しますと「モスラ立てればゴジラが立たず」が二句。「濁点“み”につかず」が二句。類句で迷ったのは、「三味線身につかず」と「三味線手につかず」。
昔、ことば遊びのゲームで、たとえば三句以上付くと落としてしまう、というルールがありました。だから付き句になりそうなものをわざわざ出して、付き句にしてしまうということも、ゲームとしてはあったようですよ。
というのは、投句するときに投句料を払い、その集まったおカネが賞品になりましたからね。付き句になりそうなものは落としてしまった方が、自分が選ばれる確率が高くなる、ということでしょう。
時事を詠んだものがいくつかありました。「アラブ立てれば油は絶えず」「アジア立てればコリアが立たず」「楽天見に行かず」「拉致はあせればこちらが負ける」。 こういう時事吟は、早いものだと、半年もするとわからなくなっちゃう。ましてや、10年、20年たったら、よほどの大事件でないと何のことやら…???ということになりかねません。
ARC send Minnie two cars.アーク・センド・ミニー・トゥー・カーズ。繰り返して声に出して読んでみると、なるほど、元句は「悪銭身につかず」なんですね。「米国赤十字はミニーにクルマを2台送った」という意味だそうです。これは珍しい。全文が英文というのは、私の50年の経験で初めてです。ミニーはミッキーマウスのガールフレンド、マーガレットの愛称と辞書に出ていましたが、ともあれ、努力賞をさしあげましょう。
最後に一つ申しあげると、地口附は、短いほどむずかしいですね。付き句が多くなります。
中七据字の題は「こればっかりは」「何がなんでも」ですが、こちらにも、まったく同じ付き句がありました。「宝くじこればっかりは神頼み」。いいんですが、よほどでないと付き句はやはり取りにくいですね。
妙に面白かったのは、「柿食えば何がなんでも法隆寺」。なにか深遠なことをいおうとしているのかしら。これでいくと、「古池やこればっかりは水の音」「荒海やこればっかりは天の川」「朝顔に何がなんでももらい水」…と、いくらでもできる。ここに面白さを感じるかどうかというのはセンスの問題ですね。いい悪いじゃありません。
私は「貧乏くじこればっかりはよく当たり」を天に取りました。この「よく当たり」という止め方は川柳止めといいます。最近は川柳止めをいやがる傾向がある。「よく当たる」のほうが好まれるようです。
中七据字だけじゃありませんが、噺家(はなしか)さんが寄席の大喜利などでやる「やりくり川柳」というのがあります。
「これから川柳を作ってもらいます」といって、まず、噺家さんに何でもいいから五文字をいわせます。それを上五に置いといて、中七据字の題、たとえば「こればっかりは」を見せて、それで川柳を作れというわけです。この下五に何をつけるか、なんですね。
この下五を考えるときにいちばん役に立つのは、どんな場合でも通用するような文章、ことばです。いちばん典型的なのが、五文字じゃありませんが「それにつけても金のほしさよ」ですね。「金が要る」とか「金がない」というフレーズは、だいたい何を持ってきてもなんとかなる。
噺家は常日ごろからアンテナを立てておいて、こういうフレーズを耳にしたらこれは「やりくり」に役に立つな、という風にして引き出しに入れておくんですね。みんなその場で瞬間につくられたように思うから、ワーッと手をたたくけれども…。
みなさんのお作に入れてみましょうか。たとえば「好き嫌いこればっかりは金が要る」「貧乏くじこればっかりは金がない」というぐあい。どんな場合でも、いつの時代でも、どこの人にも通用するフレーズというわけです。
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