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感じて 地球の息吹

都心の水辺から考える環境問題 東京の真ん中でエコツアー

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人々の生活から影響を受ける神田川

川を浮遊するオイルボール。他にも小さな油の粒々が浮いている

それでも神田川に入ると、隅田川に比べて臭いや汚れが少し気になってきた。中林さんは、前日の「ゲリラ豪雨」の影響によるものだと説明する。

「突発的な大雨が降ると、下水管が蓄えられる水量を超えてしまい、マンホールから水があふれないようにするため、下水と共に川へ雨水を放出するしくみになっています。このため豪雨の翌日の神田川は汚いのです」

中林さんが指さす先には、ラグビーボール大の白い物体が浮いていた。「油が下水処理されずに川にそのまま流れて固まったもので、オイルボールと呼ばれています」。注意深く川面を見ると、無数の小さなオイルボールが確認できた。家庭や事業所から排出された油の固まりだという。その事実にツアー参加者はショックを受け、言葉を失ってしまった。

三崎橋ごみ中継所。現在の神田川は、不燃ゴミの運搬水路として、また、処理された生活排水の行き着く場として利用されている

JR山手線をくぐって秋葉原を抜けると、御茶ノ水駅付近にたどり着いた。

「神田川にも船が通っていることをアピールするため、ホームにいる人に手を振ってください。川に関心を持ってくれるかもしれませんから」。船に視線を集めるため、中林さんが鐘を鳴らす。参加者が手を振ると、ホームから数人が手を振り返してくれた。

水道橋付近では、普段は見ることがないゴミ運搬船とすれちがった。

「文京区と千代田区の一般家庭から出た不燃ゴミは、ゴミ収集車で回収され、ここ三崎橋ごみ中継所からゴミ運搬船で羽田沖の中央防波堤最終処分場に運ばれます。焼却処理された灰は海中に埋め立てていくので、ゴミが増えれば増えるほど海が小さくなり、魚もとれなくなるんです」

無残に壊された江戸時代の石垣

神田川から分かれ日本橋川へ進んだ。川の真上を首都高速5号池袋線が走っているため、日が当たらない。川の上は用地買収の必要もなく、また日本橋川は水運としての役割が失われていたこともあり、64年の東京オリンピック開催を間近に控えた日本政府は、首都高速を日本橋川の上に建設したのだった。

高速道路に覆われた現在の日本橋川。奥には日本橋が見える

川沿いには江戸時代に積まれた江戸城の石垣があり、積まれた石には、作業にかかわった大名家の印や家紋が刻まれている。高速道路の下に、人知れずこんな文化遺産があるとは。

だがいちばんの驚きは、高速道路建設のため、歴史を伝える石垣が無残にも切り取られたり、崩されたり、コンクリートで固められたりしている姿だった。

中林さんが訴える。「高度経済成長の中、目先の便利さだけを追求したのでしょう。石垣の変わり果てた姿からは、何の疑問も感じずに石垣を壊していった当時の人々の意識が浮かび上がってきます。これから何百年先、人類が21世紀を振り返ったとき、私たちが現在行っていることは、どのように評価されるのでしょうか。環境破壊だと批判されているかもしれません」

見えなかった川の姿が見えてくるツアー

茅場町付近で船は右折し、亀島川という支流に入る。やがて隅田川と合流し、先進的なウオーターフロントの景色を見ているうちに、勝どきマリーナに戻ってきた。

親子3人で参加した遠藤美代子さんは、「子どもたちが遊びながら環境学習ができる点と、いつも上から見ている川を船で渡るのも楽しそうだな、という私の関心もありました」と参加動機を教えてくれた。中学2年生の友里亜さんは、「今見ている川が、昔は運河として道路のように使われていると知ってビックリ」と、物流の道だった川の役割が印象的だったようだ。

水辺のエコツアーは、歴史的、文化的な見どころが多く、環境問題に興味がなくても楽しめる内容だ。それでも、生活から遠ざかりつつある川の存在が、少しでもリアルに、身近に感じられる機会となれば万々歳だ、と中林さんはいう。

都市は海を埋め立て、野山を切り開いて形成されてきた。コンクリートで覆われた大地の底をうねる下水道の行きつく先は、川である。普段とは逆に、川から見る街は美しいだろうか。自然を犠牲にしていないだろうか。水辺のエコツアーは、川と人間のかかわりを再考するスローな時間を提供してくれる。

地球のためにできること

生活に密着した川を身近に感じてほしい

「あそんで学ぶ環境と科学倶楽部」理事長の中林裕貴さん

前職は、環境汚染を測定する機器の販売やレンタルをしていたという中林さん。よりよい環境を残していくには、環境教育が重要だと語る。

「仕事で環境汚染の測定にも携わりながら、3、4年前から、これ以上の汚染レベルの悪化を科学技術で回復させるのは難しいと感じるようになりました。あとは、一人ひとりの意識の変化にかかっていると思うのです。となると、鍵を握るのは環境教育ではないでしょうか」

温暖化で水没の危機に瀕(ひん)している国、消え行く熱帯雨林など、日本から遠く離れた地域の環境問題についても、情報が入ってくる時代になった。

「そうした問題も重要ですが、足元の環境問題に目を向けることも重要だと思います。水辺のエコツアーに期待するのは、家に帰ってからオイルボールを思い出し、油を流さない工夫をするとか、不燃ゴミの行き着く先が海上の埋め立て地だと知ったことでゴミになるものは買わない、といった具体的な行動につなげてもらうことです」

エコツアーに参加する動機は、江戸時代への興味でも東京の文化でもいいという。

「川に愛着を持ってもらうことが大事です。もし、愛着のある店や公園が汚されていれば、嫌な気持ちになるはず。川が人々にとって身近な存在になれば、川を汚す行動を考え直す意識の変化につながると思うのです」

文:奥田みのり/写真:中野克哉

NPO法人 あそんで学ぶ環境と科学倶楽部

http://enjoy-eco.or.jp/

住所: 東京都中央区勝どき3-15-3 勝どきマリーナ3F
TEL: 03-5547-8778 (9:00〜17:00)

神田川・日本橋川コース(4時間コース)は、大人5000円
各種コースあり。いずれも事前の予約が必要

(更新日:2008年09月12日)

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