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経済成長と利便性の追求のため、“開発”の名のもとに本来の姿を変えられた山や海、そして川。元に戻ることは難しい都心の自然だが、自浄能力と一部の人の努力で徐々に生命力を取り戻しつつある。地上からではなく、川の上から川や街を見ると、いつもとは違う風景が見えてくる。
予約が2カ月先までいっぱいだという東京のど真ん中で体験できるエコツアーがある。NPO法人「あそんで学ぶ環境と科学倶楽部」が主催する「都心の水辺でエコツアー」だ。今回参加した「神田川・日本橋川コース」は、中央区の勝どきマリーナから出発し、「エコボート」と呼ばれる10人乗りの電気ボートで4時間かけて回るというもの。 乗船前のレクチャーでは、江戸時代と現在の地図を比較して、人工的に作られた川の流れや埋め立て地の説明を受けた。
「実は東京の河川は、江戸時代に人の移動や生活物資の運搬のため水路として整備された人工物なのです」と今回船長として案内してくれた、同NPO法人理事長の中林裕貴さん。「もともと『平川』と呼ばれていた神田川は、現在の丸の内や日比谷に注ぎ込む川でした。徳川家康は、江戸の飲料水を確保するために平川を改修し、神田上水を整備しました。また、生活物資や建築資材を運ぶために運河をつくり、さらに江戸城の堀をつくるために川の流れを変えることで江戸の町が形成されていったのです」
レクチャーの後、ライフジャケットを身に着け出航した。

今回のツアーは、隅田川を上流に進み、神田川、日本橋川の順に、反時計回りに進むという。
「海の干満で川にも海水が入ってきます。上げ潮(満潮)に対流すると船は進まないので、干満によって回り方を変えています。今日はこれから上げ潮に入るので、隅田川を上っていきます」と中林さん。満潮と干潮の水位差は2メートルにもなるそうだ。隅田川の護岸コンクリートの壁にはりついているフジツボやカラスガイを確認し、ここが海水と川の真水が混ざる「汽水域」であることを理解した。隅田川では満潮時、埼玉県戸田市あたりまで海水が上っていくという。
「東京の川は汚い、臭い」というイメージがあるが、隅田川を回遊する限りは気にならない。プランクトンや藻のせいで多少緑色に濁って見えるものの、透明な管に川の水を入れて上から確認すると、60センチ先の底の模様が見えるほど透明だった。実際、川の透明度は、2メートルくらいはあるそうだ。
意匠を凝らした大きな橋をいくつかくぐり、両国橋のところで左に折れて神田川へ。神田付近では係留されている数多くの屋形船が、江戸時代の歓楽街の名残を感じさせる。
神田川には、1980年代初頭まで周辺住民の生活排水がそのまま垂れ流されていた。その後、東京西部に多くの人が住むようになり、排水が集まる神田川の水量は増加。川の護岸も高くされた。川側に窓が一つもない当時建てられたビルは、神田川の汚れや臭いがいかにひどかったのかを物語っている。
現在でも御茶ノ水周辺では、9割以上の水が生活排水だという。しかし、今では下水処理場が作られ、川の水も徐々にきれいになってきているため、新しいビルの川側には窓があり、ボラやコイの姿も見ることができるほか、アユの遡上(そじょう)も確認されている。中林さんは、悠然と泳ぐアザラシの姿を目撃したことがあるそうだ。

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