
東京都内に住むサラリーマン齋藤剛さんには、群馬県高崎市郊外の丘の上に週末だけ訪れるセカンドハウスがある。
「14年前に、妻と相談して建てました。昔から登山やマウンテンバイクなどアウトドアが大好きで、定年後は山に住もうと決めていたのです」。今年62歳だから、セカンドライフ設計を始めたのは40代後半ということになる。週末だけの家の庭で、野菜の世話をするのが今いちばんの楽しみだという。
若い頃からアウトドアのほかにも旅行やバンド活動などを楽しんできた剛さんは、自宅にこもって庭いじりを楽しむようなタイプではなかった。この家を持つまでは花の名前も知らない植物音痴で、花壇の手入れはもっぱら妻の昭子さんの仕事だった。

そんな剛さんが野菜畑を作ろうと思い立ったのは、セカンドハウスの庭に敷き詰められた芝生の手入れに、思った以上に手間がかかったためだ。敷地100坪で、80坪ある庭は、花壇を除けば大半が芝生だ。放っておけばよいかと思っていたが刈り取りや雑草取り、10年ごとの植え替えなど、芝生の維持には時間も手間もがかかる。どうせ手入れが必要なら、いっそのこと野菜を育ててみよう、と思いたったのだ。

剛さんは、芝生用に表面に客土が盛られただけの荒地を、スコップ1本で開墾した。5年前のことだ。
「まさか、こんなにはまってしまうとはね」。長靴にカウボーイハットとネルのシャツ、コーデュロイのパンツといういでたちの剛さんは、庭仕事もすっかり板についている。最初は粘土質の赤土ばかりだった庭が少しずつ手をかけることで8坪、七つの畝(うね)のある自宅菜園になった。今は、ホウレンソウや春菊など全10種類の冬野菜を栽培している。この日も、昭子さんとふたりで午前中に大根の種を撒いたばかりだ。
芝の手入れが大変で野菜づくりを始めた齋藤さん夫妻だが、土地さえあれば畑になるというわけではない。宅地用に造成されただけの土地は、雑草こそ生えるものの、根菜類の栽培などには到底向かないものだった。ふたりは土壌の改良から着手した。目をつけたのは、庭に積もりっぱなしになっていた落ち葉と、家庭の生ゴミ。


まずは庭の土をベニヤ板で囲い、簡易コンポスターを作った。このなかに、ビニール袋に入れて保存しておいた落ち葉と、土、生ごみをサンドイッチ状に積み上げる。生ごみは、乾燥させた市販の腐葉土と一緒にポリバケツに混ぜ込んでおいたものを、東京の自宅から運んできた。積み上げた中身は2週間毎の天地返しを2、3度繰り返して、堆肥(コンポスト)になるまで放置する。
「出来上がった堆肥は、畑全体にすき込んでいきます。こうすることで、水はけが悪く硬かった赤土が、だんだんと作物に適した土に変わってきました。毎年、収穫物のできばえを観察していると、土が年々良くなってくるのを実感します」と剛さん。庭で作る野菜のために、庭に落ちてくる葉っぱや家庭ゴミをうまく利用することに成功したのだ。
現在は市販のコンポスターも使って、本格的に堆肥づくりをしている。今では、剛さんは昭子さんも顔負けの植物通、野菜通だ。連作障害を防ぐために毎年どの畝に何を植えるかを計画し、撒きどきや間引きのタイミングをパソコン上で、エクセルファイルを用いて管理もしている。

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