手塩にかけて育てた野菜たち。家族みんなの楽しみは、やはり食べることだ。
「無農薬の有機野菜なので、味が濃くて美味しいですね。東京で買って食べる野菜とは、やはり違うなと感じます」と昭子さん。

今までの傑作はアスパラガス、ゴーヤ、大根、ヤツガシラなど。とくに美味しかったというアスパラガスは、実は園芸店で買った観賞用の苗。花のつもりで畑に植えていると、3年ほど後に竹の子のようにアスパラの新芽が出てきた。一部を食用に、一部を苗として育てて、今ではアスパラ用の畝が1本ある。「甘くて柔らかくて、今まで食べたアスパラの中で一番美味しかったです」と家族全員が大絶賛だ。

食べるだけではなく、育てているからこその楽しいエピソードはいくつもある。生育の早い夏野菜は収穫のタイミングが勝負で、つい時期を逸して直径5センチもある巨大なオクラができたり、長さ50センチにまでキュウリが育ってしまったこともあるという。

「直径5センチのオクラを見ると、野菜に対する見方が変わります。私たちが八百屋で手に入れるオクラは、ここぞという食べ頃を見計らって農家の人が収穫してくれていたものだったんです。そう思うと有り難いですよね」と昭子さんはしみじみ言った。
市民菜園や家庭菜園を始めると「市販の野菜はまずくて食べられない」などと言い出す人も少なくないが、試行錯誤で土壌作りから始めた齋藤さん夫妻は逆に、農業や野菜作りに深い敬意を払うようになったようだ。


「野菜は春植えと秋植えの2シーズンに分かれているので、半年ごとに結果がでるのが面白いですね。しかも今年ダメでも来年がある。来年の堆肥はどうしようとか、研究の余地が色々あるので飽きないんです」と語る剛さん。ただ週末にしか庭仕事をしに来られないので、植え時、収穫時を逸してしまうこともしばしばだ。タイミングを逃がすと作柄が良くならないので、ずっとそばにいられないのは、やはりハンディーだという。収穫のタイミングが遅れて育ちすぎてしまった野菜からは、育てる楽しみだけではなく学ぶことも多かったようだ。
それにしても齋藤さん夫妻は仲が良い。登山や旅行が趣味のふたりは、今でもキャンピングカーにテントと食料を積んで北海道を回ったり、バックパックを背負ってヒッチハイカーさながらのニュージーランド旅行をしたりしているとか。
「野菜作りも、ふたり一緒に庭に出て働くことに、幸せを感じます。将来何をするにしても、ふたりで楽しい時間をもてたらいいなと思います」と昭子さん。定年後に、本格的にこの家に住むことを心待ちにしている。
「その時は、もっと本腰を入れて農業をやりたいですね。今は予行演習のようなもの。ただ、趣味が多いので、そんな暇が作れるかなという心配もありますけど」と剛さんは笑う。
ちなみに昭子さんは、今でも娘さんに向かって「あの時のパパはね……」とのろけ話をするそうだ。これだけ仲の良い夫妻だから、ふたりで過ごすセカンドライフも豊かな時間になるに違いない。

土いじりをしたくても畑がないという人にお薦めは、ベランダ菜園。根を深く張る根菜類は難しいが、バジルやイタリアンパセリ、大葉、山椒などのハーブ類なら、ベランダの鉢で十分育てられる。また葱や三つ葉を買った時、根っこを捨てずに鉢に植えておくと、新芽が次々と育ってくる。アスパラを育てる時は、種からではなく観賞用の苗を大きくて深いプランターに植える。2、3年後、タケノコのように旧芽の側から新芽が生えてくる。この新芽がアスパラガスの食用部分。新芽を一部残しておくと、次の年にさらに新芽が生え、長ければ10年間は栽培可能だ。


齋藤剛(たけし)・昭子(あきこ)
剛さんは1945年7月、母親の疎開先の福島で生まれ、後に東京に戻る。昭子さんは同年9月、中国の大連に生まれ、帰国後は父親の転勤のため全国各地で暮らした。同じ高校で出会ったふたりは、高校時代から付き合いを始め、25歳で結婚。二女をもうける。91年に、セカンドライフに備えて高崎に100坪の土地を購入、ログハウス風の別荘を建てる。平日は昭子さんの父親(94歳)、長女夫婦、孫二人(4歳と1歳)の4世代7人家族で、東京都東久留米市に暮らしている。
からだプラス − 野菜で元気! http://doraku.asahi.com/karada/vegetable/list.html
ライフスタイル − 心地よい暮らし http://doraku.asahi.com/lifestyle/lifecolumn/list.html
(文:石本 君代)
(更新日:2007年12月17日)
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