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「銀座」の美味しい魅力をお届け――。
料理評論家・山本益博さんが、銀座の街を歩きながら、気軽に訪問できる食の名店と、銀座らしいおすすめの場所を紹介していきます。さらに、散歩を楽しくする、写真の撮影のコツもお教えします。
第1回となる今回は、誠実な仕事を見せてくれる江戸前のすし屋、銀座5丁目「鮨 からく」を訪問しました。

「マスヒロのマナー手帖」の連載が好評につき、引き続いて「銀座美味散歩」をお届けします。ご存知のように「銀座」は日本最高級の御馳走の舞台です。できる限りヴァラエティに富んだ現在の「銀座」の美味しい魅力をお届けしてまいります。
まず、はじめは「すし」から参りましょう。銀座には1丁目から8丁目まで、すし屋が数百軒ひしめいています。一地域にこれほど同じ業種の料理店が軒を並べているというのは、世界の大都市でも極めて稀な美食地帯と言えますね。
米を常食とし、魚好きの日本人で、すしが苦手という人は聞いたことがありません。そして、銀座には美味しいものを知る、また、その代金を支払えるお客さんがあちこちからやってきます。築地が近いこともありますね。そんな理由があって、すし職人は「銀座」に店を出すことを目指し、「銀座」で仕事ができることに誇りを持つわけです。

今回、わたしが選んだ1軒は、とても誠実な仕事を見せてくれる「からく」です。「からく」は「江戸前」を看板に掲げて、その名にふさわしいすしを握ってくれます。その仕事ぶりが真っ当なんです。
「江戸前」というと、皆さん、どんなことを思い浮かべますか? 江戸時代の江戸城の前に拡がる海で獲れた、新鮮で質の高い魚介をすし種にして握ったところから、「江戸前」という言葉が生まれた。おそらく、ほとんどの方はそうお考えでしょう。わたしもはじめはそう思っていました。
でも、今からちょうど30年前の1982年4月、「東京・味のグランプリ200」という東京の飲食店ガイドを上梓した折り、東京の名だたるすし屋を食べ歩きながら、「江戸前」について今一度考えました。「江戸前」のにぎりずしの両横綱は、まぐろとこはだです。まぐろの赤身は醤油に漬けて、こはだは酢と塩で締めてから握ります。
まぐろは生でも一仕事してある、こはだは煮ても焼いてもましてや生では食べられない、ところが酢締めにすると無類の美味しさに生まれ変わります。
すしのために生まれてきた魚とでも言いましょうか。つまり、どちらも「仕事がしてある」すしなんですね。「仕事がしてある」は骨董の鑑定家がテレビで有名にした文句ですが、わたしは30年前にすし職人の仕事ぶりを見て「東京・味のグランプリ200」のなかでそのフレーズを使っています。


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