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「銀座」の美味しい魅力をお届け――。
料理評論家・山本益博さんが、銀座の街を歩きながら、気軽に訪問できる食の名店と、銀座らしいおすすめの場所を紹介していきます。さらに、散歩を楽しくする、写真の撮影のコツもお教えします。
第4回となる今回は、見事な職人仕事で堪能させてくれるてんぷら屋、築地「なかがわ」を訪問しました。

てんぷらはなにより季節を食べる料理です。
春でしたら「しらうお、きす」秋でしたら「松茸(まつたけ)、はぜ」冬でしたら「すみいか、しらこ」そして、いまの初夏なら「稚あゆ、あおりいか、ぎんぽう、穴子」などです。
こうやってみると、夏は意外にも天種が豊富であることが分かります。東京湾の静かな海で暖かい日差しを浴びながらおっとりと育った小魚たちが、てんぷらという調理に合っているんですね。
小魚ですから、揚げれば尻尾(しっぽ)まで美味しく食べられる、これが妙味です。きすやめごちやはぜのてんぷらで尻尾を食べずに残してしまう人をよく見かけますが、もったいない。とても香ばしくて、てんぷらだからこそいただける御馳走(ごちそう)でもあります。ふぐや鯛(たい)ではこうはいきません。

また、てんぷらは職人の技を食べる料理でもあります。揚げることによって、生では味わえない、そして刺身以上の魚介のうまみを舌で楽しむ、すし、そば、うなぎと並ぶ江戸の郷土料理です。
一昔前まで、調理は「生、焼く、煮る、揚げる」という順に優劣がつけられていました。いちばん美味しく食べられるのは刺し身で、次に焼き魚、煮魚と、そして煮ても焼いても食えなくなったら揚げると、てんぷらという調理は大きな誤解を受けていました。
ちょっと考えればすぐに分かることなのですが、素材の質がよくなければ、どんな調理でも美味しくは仕上がりません。てんぷらは調理する寸前まで魚に手を加えず、活(い)きのよい魚の状態を保ったまま揚げるわけで、魚の見極めから油をコントロールしながら揚げる技術まで、プロフェッショナルな仕事が要求されます。家庭で調理するのは、最も難しい料理かもしれません。つまり、てんぷらこそは外食に限ります。
それでも、なかなか見事な職人仕事でてんぷらを堪能させてくれるプロフェッショナルがいないんですね。ほとんどは、てんぷらではなく、魚のフリッターを食べさせてくれる店ばかりです。
そんな中にあって「なかがわ」は、奇跡的に「てんぷら」を食べさせてくれる数少ない1軒です。奇跡的というのは、海老(えび)は海老の味がし、いかはいかの味がし、穴子は穴子の味がするてんぷらのことです。食べ進むうちに、揚げる油の味で口が飽きてきて、何を食べても同じ味のように思えてくるてんぷらは、正しくはてんぷらではなく、外国にもある魚の揚げもの、フリッターです。


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