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自分で決める 豊かな老い

高齢者が元気な国 デンマーク 〜松岡洋子さんに聞くシニア住宅のイキイキ暮らし〜

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リタイア後の人生を楽しく送るには、住まいをどう考えるかが重要な要素。シニアの生活スタイルに合った家が理想です。福祉先進国デンマークでは、元気に暮らすシニアたちは、どのような家に住んでいるのでしょう。デンマーク高齢者福祉研究家の松岡洋子さんに聞きました。

高齢者に配慮した住まいへ「早めの引っ越し」

松岡さん  デンマークの高齢者の生活を考える時、まず理解しておきたいのは多くが、夫婦または一人で暮らしているということです。子供は18歳になると家から出て独立しますので、子世帯と同居することはほとんどありません。福祉は住宅に始まり、住宅に終わるとされる国ですから、若者住宅、家族住宅などの公営住宅も充実しています。親たちも子供に依存せず、自分のことは自分でこなす意識が根強くあります。別々に生活していても心は近く、毎日のように電話で話したり、週末ごとに訪ねたり、という形が一般的です。

好みの家具で暮らしを楽しむ高齢者住宅内部

とは言っても、歳をとって身体能力が衰えてくると、若い時から住んできた家では何かと不便も生じます。ギリギリまで頑張っているうち障害も重くなり、24時間介護の施設へ……となっては、選択肢(せんたくし)のない強制的な引っ越しとなってしまいます。デンマークの高齢者政策は「自分らしい価値を維持してきた生活を、できるだけ長く続けること」を主眼としています。そこで1995年あたりから提唱されているのが、55〜70歳での早めの引っ越しです。市が提供する高齢者住宅や住い手自らが企画したコ・ハウジングなどに自分の決断で引っ越して、そこを「新しい自宅」として最後までイキイキと自分らしく暮らそうというものです。

町の風景に溶け込む高齢者住宅

実はデンマークでは、戦後の好景気を背景にプライエムと呼ばれる高齢者施設をさかんに建設していました。プライエムは日本の特別養護老人ホームに相当しますが、決して4人部屋や6人部屋ではありません。17平方メートル前後の個室で思い出の家具を持ち込んで生活し、食事は提供され、24時間の介護もついて、一見手厚い方法とも思われます。しかし、ここでは入所者は集団として扱われ、施設の都合に合わせたリズムでサービスを受け取るだけ。お出かけやアクティビティはあるとはいえ、それは住人のみに限られた閉鎖的で自己完結的な世界です。個室と食堂を行き来する毎日に、生きる力も失われていきます。政府はこの弊害に気づき、1988年にプライエム新規建設を凍結。脱施設をめざし、住まいとケアの分離に取り組むようになったのです。

松岡さんは年に数回はデンマークを訪れる

施設の代替として各市で作られた高齢者住宅は、一般住宅同様の建物に、徹底したバリアフリー仕様を盛り込んだものです。戸建てやテラスハウス、集合住宅などタイプもさまざまで、広さは60平方メートル前後。キッチン、バス・トイレなども整っています。身体的ニーズを基本に、住まいの状況など――たとえば3階以上に住んでいるがエレベーターがない、トイレに車イスで入れないなど――に応じて、市の判定を受けて入居することになりますが、家賃はだいたい10万円程度。自宅で暮す高齢者と同様に、在宅ケア(無料)を受けて暮します。

高齢者住宅は介護施設ではなく、あくまでも自宅で、自分らしく生きていくための場なのです。

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