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自分で決める 豊かな老い

〜老い、介護と向き合う〜 フリーアナウンサー小林完吾さんに聞く

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年齢を重ねていけば、親の介護や自分自身の健康など、さまざまな問題も出てきます。その時がきても自分らしさを失わず、心豊かに日々を送るには……。自宅で4年半にわたって母を介護し、その後は自らも脳梗塞(こうそく)で倒れた経験を持つ、フリーアナウンサーの小林完吾さんにお話をうかがいました。

自宅に引き取り、手厚く母の世話をした4年半

小林さん  最近の世論調査では、自宅で人生の終末期を迎えたい人は6割だそうです。しかし、家では死ねない現実が約9割。住み慣れた我が家で家族に囲まれて……という希望がかなえられない。それは、介護は大変なことだという意識を自治体やマスコミが植え付けてしまったからだと思います。

現在も各地に講演に出ることの多い小林さん

昔は、自分の親に対して「介護」などとは言ってませんでした。親が高齢になり、お世話が必要な体の状態になったら、子が面倒をみるのが当たり前。ところが行政が、国や自治体で丸抱えして面倒をみるという方向を作ったために、在宅での介護に暗く苦痛に満ちたイメージがついたのではないでしょうか。また、かつては地域での医療体制というものがありました。おおげさなことではなく、いわゆる往診です。具合が悪くなったら、電話をすれば、近くのかかりつけ医が自宅まで来てくれたものです。往診がなくなった今では、体調を崩すと病院に行くしかない。そしてひとたび入院となると、なかなか帰宅もできません。

僕の母は我が家で亡くなりました。脳梗塞で倒れ、うちに引き取ってから4年半です。現役で仕事をしていた頃だったので、その間の介護はほとんど家内の担当。朝晩や休日に家内を手伝うのが僕の役割でした。体が元気だった頃はたびたび家に泊まりに来たり、一緒に旅行にも行っていた母でしたから、僕のところでなら優雅な寝たきり生活ができると思ったみたいですね。

実際、ベッドの環境や食事、身づくろい、どれをとってもみじめさを感じさせないよう気をつけました。家内は非常によくやってくれましたね。清拭(せいしき)や着替えも要領よく行い、クッキー一枚食べた後もシーツをきれいに掃除して。幻覚や幻聴の出た母の言葉も、決して否定することなく上手に話を合わせてくれていました。外部のサービスは、有料の訪問入浴を月2回頼んだだけ。その頃はまだショートステイのシステムも普及していなかったので、介護期間中、家を空けたのは、姉に母を頼んで一泊旅行に行った時のただ一回きりでした。

実は、母を自宅に引き取る時に、家内が出した条件は「介護人として看(み)る」ということでした。嫁しゅうとめの立場だと感情に引きずられることもあるだろう。しかし、仕事と思えばきめ細かくお世話ができる、と。その発想は正しかったと感じます。また、家内は30代の頃に介護の講習を受けているんです。当事者になってからでは、講習に出る余裕などありません。必要になる前にそうした体験をしておくことは、これからの時代、非常に重要と思います。

長男と母を送った経験をつづる著書「いのち生まれ・生き・老いて」

介護をやめたいと感じたことはありませんでした。親を世話するのは当然と思っていたから。ただ、当時は家内が40代、僕も50代で、体力的にも経済的にも比較的条件がよかったという面もあります。

では、自分自身が介護を受ける状態になったらどうか。子が親を大切にいたわる社会であるべきなのは確かですが、僕は娘に面倒をみてもらおうとは思わない。今は社会の中に、さまざまな援助の仕組みができていますから、それをうまく利用しながら自分たちで生きていこうと考える層は、僕に限らず、確実に増えていますね。

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