広大な土地と豊かな自然に恵まれたオーストラリアは、北欧の国々とはまた発想の違う福祉のあり方で注目される国でもあります。そこでのシニアの暮らしとは? ブリスベン総領事としてつぶさに社会事情を知り、現在は昭和女子大学学長を務める坂東眞理子さんに、オーストラリアの高齢者事情をうかがいました。
オーストラリアという国は、イギリスの植民地だった影響か、いわゆるアングロサクソン型の福祉国家です。北欧型が、若いうちから多くの税金を払い、そのぶん手厚い社会福祉システムの恩恵を受けられるのに対し、アメリカやイギリスをはじめとするアングロサクソン型は、税負担は比較的少なく公的サービスもそこそこ。必要なサービスは自分で民間から調達するという、セルフヘルプの考え方です。
高齢者に対するケアも、行政が運営する施設型福祉が中心だった時代もありましたが、1989年からは在宅ケア中心に政策転換し、サービスもできるだけ民間に移管する方向になりました。もちろんサービスの内容は行政側が細かくチェックします。ケア施設などでも、建てた時のチェックだけでなく、シーツは週何回取り換えているか、食事は温かいか、メニューは選べるか、家族のクレームにはどう対応しているか……と非常に細かく定期監察しています。民間に任せるからこそ競争力が生じ、サービスの質のアップや低コスト化が実現できてきたわけです。

在宅と言っても、若い頃からの住居に住み続けるわけではありません。たいていの人が、リタイア後に住み替えます。もともとオーストラリアは夫婦が基本単位のカップル文化。どこに出かけるにもカップルで行動することが多いですね。子どもは大学生くらいになると親元を離れ、その後は夫婦中心の生活になります。だから、仕事から解放された後は、2人で第三の人生を楽しめる、より快適な住まいへと引っ越すのです。

シニア向けのリタイアメント・ビレッジは各地にできています。民間で運営する施設なので、入居には特に経済状況や身体状況などの条件はありません。緑の中にゆったりと建つ、3階くらいの低層のコンドミニアムが多いですね。賃貸物件もありますが、だいたいは分譲です。価格はピンからキリまで。しかし、なにしろ日本の21倍の面積に人口は約2000万人という国ですから、土地が安く、80平方メートルの物件で600〜700万円といったところが中心でしょう。
日本の特別養護老人ホームに相当するのが、ナーシングホームです。リタイアメント・ビレッジが生活を楽しむための住まいであるのに対して、ナーシングホームは手厚いケアが得られる住居と言えます。さまざまなタイプがありますが、個室に使い慣れた家具を置き、自宅感覚で過ごせるところも多数。リタイアメント・ビレッジにナーシングホームを併設している場合もあります。
高齢になったら子どもの世話になるという感覚はありません。子どもたちはリタイアメント・ビレッジやナーシングホームに親を訪ね、交流のひとときを楽しみます。
※当サイトの推奨ブラウザは、Windows Internet Explorer6.0以上、Netscape7.0以上、Firefox 1.0以上、Macintosh Safari 1.0以上となります。
Copyright The Asahi Shimbun Company. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
どらくに掲載の記事・写真の無断複製転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
©朝日新聞社
無断複製転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。