リタイアメント・ビレッジは、さまざまなエリアに建てられてます。
たとえば、土地の広大なオーストラリアでは、田舎に暮らしていると車がなくては生活できません。買い物に行くのも一日仕事。高齢になって長距離の運転などが負担になり、都市部のリタイアメント・ビレッジに移る人はけっこう大勢います。買い物や観劇、外食などにも、都会はやはり便利です。
また、都市部は仕事には都合がよくても、リタイア後の日々をゆっくり楽しむには不向きだという考えから、郊外に開発されたリタイアメント・ビレッジに引っ越すケースも非常に多いです。「アクティブ・リタイアメント」をテーマにした物件は多数あります。ヨットを楽しめるよう海辺に建てたところ、川や湖の近くでカヌーができるところ、隣接するゴルフ場で自由にプレーできるところ……。60代70代の体が元気なうちに、そうした自分の趣味に合う場所に移って、ゆっくりと人生を楽しむのです。

もちろんシニアになってから、いきなりレジャーに挑戦し始めるわけではありません。もともとオーストラリア人たち(オージー)は、現役で働いている時からしっかり長期休暇を取り、スポーツやレジャーを楽しむ習慣があります。だから仕事を辞めてからも、のんびりと好きなことに打ち込めるのです。
人々はふだんからみな、よく運動しています。セルプヘルプが基本の国ですから、医療や介護にムダなお金をかけないためにも健康が第一。リタイアメント・ビレッジでも、毎朝、夫婦でジョギングやウオーキングをする姿をしじゅう見かけます。おかげで男性の平均寿命の世界ランキングでは、日本に次いで常に2位か3位をキープしています。

リタイアメント・ビレッジでの住まいは、基本的にバリアフリー。広いリビングやベッドルームに、キッチン、ユーティリティーなどがつき、体が不自由になっても自分で生活できるよう設計されています。80平方メートルという広さは、オーストラリア人の目から見ればコンパクトなサイズなので、掃除もラク。キッチンや水回り設備も、シニアにとって使いやすい配慮がなされています。分譲物件なら好きなように手を入れられるため、足腰が達者な間は、家事はもとより、住まいの修理などもどんどん自分たちでやっています。サポートが必要になれば民間企業と直接契約します。掃除や洗濯、買い物、送迎などのサービス、さらに訪問リハビリや看護なども、自分で納得したところを個別に選べばいい仕組みです。
リタイアメント・ビレッジでは、夫婦でできるだけ長く人生の余暇を楽しみ、本格的な介護が必要になったらナーシングホームへ。2度の引っ越しは煩雑なようですが、より快適なシニアライフを送るための住まいと考えれば非常に理にかなったやり方と言えます。こうした積極的な住み替えを、日本でもぜひ参考にするといいですね。
取材協力:オーストラリア・クィーンズランド州政府東京事務所

坂東 眞理子(ばんどう まりこ)
富山県生まれ。東京大学卒業後、総理府入省。内閣広報室参事官、男女共同参画室長、埼玉県副知事を経て、1998〜2000年、女性初の総領事としてオーストラリア・ブリスベンへ。昭和女子大学教授、副学長を務め、現在は同学長、同大学女性文化研究所長。著書に「ゆとりの国オーストラリア―ブリスベン総領事見聞録」(大蔵省印刷局)、「男女共同参画社会へ」(勁草書房)、「新・家族の時代」(中公新書)、「女性の品格―装いから生き方まで」(PHP新書)など。
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