団塊世代が定年退職を迎え、たくさんの夫婦が今まで経験したことのない、ふたりだけの時間を過ごし始めています。仕事が忙しくてあまり家にいなかった夫と過ごす時間は、とても貴重なものになるはず。そんな時間を快適にするために、どのようなことに気をつけたらいいのでしょうか。お部屋作りや空間デザインに欠かせないにおいとのかかわり方を中心に、ライフスタイルアドバイザーの小野緑さんにお話を伺いました。

東京都出身。早稲田大学法学部卒業後、雑誌の編集者を経てフリーのライターとなり、女性誌、音楽誌を中心に活動する。1993年に株式会社「Mighty Green」を設立。出版の企画、編集、執筆活動のほか、海外ブランド雑貨のプロモーションやタイアップのコーディネイトなども精力的に行う。1997年からコマーシャルのプロデューサー、コピーライター、メディアプロデューサーとしても活躍するなど、仕事の幅を広げる。現在はライフスタイルブランド「beluga」のコンセプトプランナーとライフスタイルアドバイザーとして忙しい日々を送る。
においとひと言で言ってもそれにはさまざまな種類があります。鼻が曲がるような悪臭や、嗅(か)ぐことでリラックスできるアロマ、懐かしさを感じる香りなど…。例を挙げればキリがありません。そんなにおいを感じて暮らすことが、ライフスタイルのひとつだと小野さんはおっしゃいます。
「においというのは記憶だと思います。例えば、幼いころに感じたにおい。多くの人にとって、畳や土のにおいというのは懐かしいものです。でも一方で、その人だけが感じる、とても大切なにおいもあると思います。それは、ひとつの個性といえるのではないでしょうか」。
確かに人によってにおいに対しての感じ方は違いますし、呼び起こされる記憶もそれぞれです。過ごしてきた場所が違えば、それだけ感じ方も異なります。ところが、最近は、においを感じられる場所が少なくなってきているようです。特に都会では、芳香や消臭に力が入れられ、場所によるにおいの差がなくなっています。
小野さんは「どこも換気が効いていて、空気清浄機が作動しているため、においに気づくことが少なくなっている」と指摘します。「それは悪臭を防ぐという面ではいいことなのですが、ちょっと寂しいと感じる部分もあります」


では、夫が定年退職を迎えて夫婦ふたりで暮らし始める人々が、心地よいにおいを生活の中にうまく取り入れていくにはどうすればいいのでしょう。
「例えばラベンダーはリラクゼーション、ローズマリーはリフレッシュに効果があるといわれますが、そういうことよりも、まずは自分がどんなにおいを好きなのかを知ることが大事」だと小野さんは言います。
ふたりでインドに旅行した時に買ったお香が、ふたりにとっての安らぐにおいであれば、それをうまく使えばいい。「お互いの五感でしっかりとにおいを感じていくことが大切だと思います」


一方、これまで、昼間は妻が好きに過ごしてきた住まいに夫が入り込んでくるわけですから、妻の立場からすると、面倒なこともあるかもしれません。しかし、ふたりで過ごすことで、生活の幅が広がるといういい面もあります。
「夫婦ふたりで新しいことを始めるのがいいかもしれません。例えば、ふたりでスポーツクラブに行ってみる。そこで『少しお腹が出てきたわよね』というコミュニケーションがあって、そこから食事が変わり、朝はジョギングをしようという展開になるかもしれません。お互いが相手のことを考えてあげられるようになれば、好みが分かれるにおいも含め、心地いい空間づくりを話し合いで見つけられると思います」

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