
次に野川沿いの水辺へと移動する。国分寺崖線から湧き水が流れ込む野川には、水鳥も多い。とくにカワセミはこの公園の看板鳥だが、この日はあいにく一部の人しか観察できなかった。かわりに現れたのがキセキレイ。川べりで虫をついばんでいた。野川公園では、同じセキレイ科のハクセキレイやセグロセキレイは留鳥だが、キセキレイは秋冬にしかやってこないので、この日に見られたのは運が良かった。参加者は双眼鏡やフィールドスコープを向けて、早々とやってきた冬鳥の姿を堪能した。

続いて現れたのはカルガモ。都心の公園にある池などでもよく見かける鳥だけに、参加者も最初はあまり興味を示さなかったが、「カルガモの雄雌の違いがわかりますか?」という土井さんの問いかけで、突如、熱い視線を集める。答えは、雄雌同体。雄雌で色の異なるマガモやオナガガモなどと違い、カルガモは同色なのだ。見分け方については諸説あるが、なかなか判別は難しい。見慣れた鳥でも、雌雄の違いのような観察ポイントを作ると、急に新鮮に見えるから不思議だ。

100メートルほど先の木の中腹に、コサギが止まっていた。「何をしているんだろう」「景色を見てるんじゃない?」と、女性参加者二人ののどかな会話。「餌場を探しているか、外敵を警戒しているところだと思います。私たちはつい人間のまなざしで鳥を見てしまいま すが、鳥には鳥の事情があるんですね」と石井さん。この公園に隣接する国際基督教大学には、食物連鎖の頂点に位置するオオタカが生息しているらしい。猛禽(もうきん)類がいるのは自然が豊かな証拠だと人間は喜ぶが、中型、小型の鳥たちにとっては天敵がすぐそばにいるのだ。



本日の主役、エゾビタキを探して、芝生で整えられた広い一帯に一同移動する。まず上空を20羽ほどのムクドリが通過。つがいで行動する繁殖期が終わると、何千、何万羽もの群れを形成するムクドリは、野川公園の上空を真っ黒に染めることもあるそうだ。「ムクドリは、最近では騒音やフン害で害鳥扱いされていますが、ひと昔前は害虫を駆除する大変な益鳥だったんです」という土井さんのひとことで、つい双眼鏡を覗いてしまう参加者たち。益鳥か害鳥かで、関心の度合いも変わってしまう。
一団の後ろの方がざわついている。ついにエゾビタキが現れた模様。急いで引き返すものの、その姿は見えない。結局、数人だけが目撃できたようだ。しかし、野鳥グループは別の野鳥を見つけたようで、三脚を立てて、1本の木のこずえにフィールドスコープの焦点を合わせている。「モズがスコープに入りました。見てください」と参加者たちを招き寄せる水石さん。のぞきこんだ参加者は、次々と感嘆の声を上げた。背中のウロコ状の模様まで克明に見える。「スコープだと鳥の表情もよくわかります。口の中まで見えることがあって、その感動で、野鳥がどんどん好きになっていくんですね」と石井さん。
モズは「百舌」とも書き、鳴きまねのうまい鳥。人間の赤ちゃんの泣きまねまでするという。「モズの高鳴き75日」は、モズがキーキーと縄張り宣言の高鳴きを始めると、75日目には雪が降るという言い伝え。エゾビタキには出あえなかったが、秋の風物詩には遭遇した。
観察会の最後は、全員で今日見た鳥の確認をする「鳥合わせ」。36人が2時間探した結果、20種類の野鳥が観察されていた。今は「谷間」の時期なのでやや少ないが、冬になれば30種類ほど見ることができるという。それでもこの日、エゾビタキの姿を見た人もいて、やはり野鳥は「観ようとすれば、見える。聴こうとすれば、聞こえる」ようだ。

野鳥観察というと、つい珍しい鳥に目を向けたくなるが、どこにでもいるスズメやカラスが基本レッスンになる。「スズメ大」「カラス大」のように、野鳥の大きさを測る時の「ものさし鳥」。また幼鳥から成鳥になる過程で、姿形も動き方も変わるので、鳥を観察する訓練にもなる。特にスズメの特徴を把握していると、ホウジロ、アオジ、カシラダカのようにスズメに似た野鳥を見ても比較できるため、見分けられる鳥の数が着実に増える。
東京都の公募による登録制のボランティア。野川公園の自然観察園を主なフィールドとして活動し、作業グループ、植物グループ、昆虫グループ、野鳥グループに分かれる。野鳥グループは野川公園自然観察センターと協力して、毎年10月から4月まで、毎月第2土曜日の9時から野鳥観察会を開催。初心者向けに丁寧なガイドをしてくれる。
TEL 0422-31-6457(野川公園サービスセンター)
(更新日:2007年11月19日)
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