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社会的な問題から宇宙や脳、生命科学まで、幅広い分野に対して徹底した取材で立ち向かい、日本のジャーナリズムに影響を与え続けてきた立花隆さん。今もなお第一線で活躍し続ける立花さんに、シニア世代が学ぶことの意義についてうかがった。

60代後半ともなると、「どう生きるか」ではなく、「どう死ぬか」が大きな人生のテーマになる。特に僕は2年前、ガンを患ってから意識が変わりました。今年に入ってからは心臓の手術を受け、ステントという血管を拡張する金属の医療部品を埋め込みました。その時、医者から「これは、いつ死んでもおかしくない状況だ」と言われましてね。もはや肉体的な衰えは否定できないわけです。そうなってくると、何か新しいことをしたいというよりは、「読みたい本がたくさんあるのに、読み切れないまま死ぬのは嫌だ」とか、「どうしても学んでおきたいことがあるのに、時間が足りない」といった気持ちが沸々とわき上がってくる。知のモチベーションに関しては、衰えるどころかますます高まってきます。
そもそも「学びたい」というのは人間の本能です。学びたい動物なのです。古代ギリシャの哲学者、アリストテレスは「人間は生まれながらにして知ることを欲している」と「形而上学」の冒頭に書いています。人間だけじゃない。あらゆる生物にとって、「知りたい」は、本能なんです。アメーバだって自分がいる場所がどんなところかを探るために触手を伸ばし、自分の置かれた環境を知ろうとするのです。生きていくということは、自分の周辺世界がどういうものなのかを学び続けることなんです。学ぶ意欲がなくなったら、生物は生きていけなくなるんです。人間の場合、学ぶ意欲がなくなった人は、死んだも同然の状態にあると言っていいんじゃないですか。

学びの楽しさは、知れば知るほど、まだまだ解明されていないことがあることがわかり、さらにそれを知りたくなることなのだと思います。
たとえば、宇宙。最近になって、私たちには宇宙のたった4%しか「光ある物質」として見えていないことが明らかになりました。残りの20%は「暗黒物質」というもので、物質であることはわかっているが、どこにあるか所在不明。さらに残り76%は「暗黒エネルギー」というもので、存在することだけはわかったが、どこにどのような形で存在するか全くわからないので、とりあえず名前をそうつけただけという驚くべきことがわかったのです。
生命にしてもそう。2003年、人間の生命としての設計図である全遺伝情報(ゲノム)の解読が完了ました。人間の遺伝子の数は2万2000ほどしかないことや、ゲノム配列でいうと人間とチンパンジーは99%同じで、たった1%しか違わないことなどが明らかになりました。でも、わかったのはその程度で、遺伝子の数はわかってもそれがどんな遺伝子か、その働きまでわかったのはほんの数%で、大半はわからないのです。宇宙以上にわからない。
こんな具合に、学べば学ぶほど、解明されていない謎に突き当たる。我々はまだ知的暗黒大陸のどまんなかにいるのです。もっともっとこの大陸を探検したいじゃないですか。
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