朝日新聞がビートルズ世代に贈る、こだわりエンターテインメントサイト

メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

ヘルプ

  • トップ
  • 地球発
  • マネー
  • ライフスタイル
  • 極める
  • からだプラス
  • エンタメ

ライフスタイル

  • バックナンバー

学びて生きる

Vol.1 人間は学びたい動物なのである〜立花隆さん

  • ページ1
  • ページ2

「自分が何者か」を、同時代を意識しながら振り返る

僕は立教セカンドステージ大学で、団塊世代を中心としたシニア層の前年度の受講生に、自分史を書いてもらいました。
 なぜ、自分史を書かせようと思ったか。
 それが、自分の人生は何だったのかということを再確認する作業になるからです。「自分はいったい何者なのか?」ということは、実際に自分で書いてみないことにはわからないものです。自分について真剣に振り返ることは同時に、自分に足りないものは何だったのかと気づかせてくれます。
 受講生の多くは、文章を書いた経験がなかったのですが、授業中、私が他の受講生の文章に行うアドバイスや指摘に刺激を受け、どんどん深いレベルで書けるようになっていきました。離婚や子供を失ったこと、仕事上の失敗など、決して触れたくはない過去まで真摯(しんし)に見つめ、内面を深く掘り下げて書きあげた人もいました。

自分を振り返る手段として、自身の生まれや育ち、家系に立ち返ることも重要です。生家が福井で有名な旧家という受講生がいました。その家でかつて奥の細道の旅を終えた松尾芭蕉がワラジを脱いだというんです。芭蕉がその家に置き土産にしていった簑笠と杖(つえ)でチャンバラをしていたなんていう話を書いてくれた人もいました。たった一人の人生を振り返るだけでも、様々な歴史が見えてくる。おもしろいものだと思いました。
 同世代を生きてきたからこそ、「ケネディ暗殺」「安保」など社会的な大事件、有名犯罪事件、政治の動きなどが同時代の共有の記憶として存在しています。それだけに彼らの自分史を並べるだけで、おのずと日本の同時代史、すなわち戦後の昭和史が浮かび上がってきました。「昭和という時代は結局何だったんだろう」「高度成長期がもたらしてくれたものは何だったんだろう」など、新たな問いかけが芽生え、僕自身、昭和という時代の歴史をリアルタイムで見てきたようで実はよく見ていなかった、と気づかされました。

過去をどこまでさかのぼり、どうとらえるかによって未来の見方も違ってくる

受講生たち、すなわちシニアの世代が生きた戦後の歴史教育において、実は現代史の部分が学校教育からすっぽり抜け落ちているんです。明治まではしっかり学校で学ぶのに、現代に近づけば近づくほどあいまいなまま。そこで僕の09年の授業では、近代日本がどのような世界環境の中で成立し、どうして日本も世界もあのような恐ろしい戦争にまきこまれていくことになったのかに焦点を当てて講義しました。第1次大戦の頃から、映像の記録がしっかりあるので、いろんな映像を見ながら、世界の大きな流れをつかむようにしました。20世紀の初めから、1920年代、30年代にかけての世界の動きがわからないと、現代が分かりません。講義しながら、自分自身もこのあたりがよくわかっていなかったなと思いつつ時代を追っていくと、過去がみんな現代につながっているのだなとつくづく思います。

(聞き手:井上理江 写真:鈴木慶子)

立花隆(たちばな・たかし)

立花隆(たちばな・たかし)

評論家、ジャーナリスト。1940年長崎県生まれ。64年東京大学仏文科卒業。文藝春秋を経て東大哲学科へ学士入学し、在学中よりフリーライターとして活動開始。現在、東京大学大学院情報学環特任教授、立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科特任教授、自然科学研究機構経営協議会委員、文部科学省次世代スーパーコンピューター開発利用アドバイザリーボード委員、大宅壮一ノンフィクション賞選考委員なども務める。「田中角栄研究」「宇宙からの帰還」「脳死」「臨死体験」など著書多数。近著に「宇宙究極の謎 科学者が語る科学最前線 暗黒物質、暗黒エネルギー、暗黒時代」「解き明かされる脳の不思議 科学者が語る科学最前線 脳科学の未来」「がんと闘った科学者の記録」など。

(更新日:2009年11月12日)

前のページへ
バックナンバー

画面トップへ

※当サイトの推奨ブラウザは、Windows Internet Explorer6.0以上、Firefox1.5以上、Macintosh Safari 1.3以上、Firefox1.5以上となります。
Copyright The Asahi Shimbun Company. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
どらくに掲載の記事・写真の無断複製転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。

©朝日新聞社
無断複製転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。