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シニア世代対象の「立教セカンドステージ大学」では、「生命の多様性」をテーマに授業を進めています。具体的には、自然界や生態系のしくみを知り、生き物たちの姿を肌で感じながら、自然の大切さ、命の愛おしさを学んでもらうための講義とフィールドワークを行っています。
池袋という都会の真ん中にキャンパスはありますが、そこにも実に様々な植物が生育しています。雑草の種類だって季節によってずいぶん違います。虫やアリ、アブ、ハチなどもいます。ふだんは何気なく通り過ぎていた場所にも、多様な生物が息づいているわけです。
でもそれらも、見る人が興味を持って、意識して見ようとしなければ見えてこない。ただの同じ雑草、同じ虫でしかないわけです。
「同じ」にしか見えない人は、他のことにおいても、ある一面のパターン化されたものだけ見て「こんなもんか」というような見方しかできません。私はそういうがさつな神経、思考で生きるのはもったいないと思うんです。少し意識を持って物事を見つめるだけで、いろんなものが目に飛び込んでくるし、新たな発見もある。つまり、自然観察は生命の多様性を教えてくれるだけでなく、多様にモノを見る眼も養ってくれます。
そのため、授業でも天気が良ければ、なるべくキャンパス内を散策し、植物や生物を観察してもらうようにしています。

幸いにも、シニア世代の受講生たちの多くは幼い頃、小川で魚を釣ったり、昆虫採集をしたりした経験があり、自然の楽しみ方を知っています。みんな童心に返るのか、昔の感覚が呼び起こされてか、目を輝かせて観察しています。講義の番外編として土曜の早朝、「自然観察会」と称し、自由参加で小石川植物園や上野動物園、夏の暑い盛りにはサンシャイン水族館へ行ったほか、6月、10月には上高地へも行きました。「自然観察しているだけで、ずいぶんモノの見方が変わった」と話してくれる受講生も多かったです。
受講生にはフィールドノートを渡し、授業外のことでもいい、何かを観察したら文章でもイラストでもいいので書いてください、と伝えました。先日も「温泉旅館に泊まることがあったら、豪華な夕食メニューの中に、いったいどれだけの生物がいるかリストアップしてみてください」と言ったら、おもしろがって多くの人が挑戦してくれました。おそらく40〜50種類はあると思うのですが、そんなこともまた生命の多様性を意識するきっかけになります。
いずれにしても、生命の多様性を知ることで自然そのものも守られるし、人間の感性もまた磨かれる。そのことを私はこの授業を通してシニア世代に伝えていきたい。そして、彼らから子供や孫に伝えてほしいと思っています。
(聞き手:井上理江 写真:鈴木慶子)
立教大学理学部生命理学科教授。1973年大阪府立大学農学部卒業後、大阪市立大学理学研究科生物学専攻へ進み、理学博士号取得。89年4月より立教大学一般教育部自然科学科助教授、2002年4月より現職に。主要研究テーマは鳥の行動生態学、進化生物学。著書に「花・鳥・虫のしがらみ進化論―『共進化』を考える」「擬態―だましあいの進化論1 昆虫の擬態」「種子散布―助けあいの進化論1 鳥が運ぶ種子」「種子散布―助けあいの進化論2 動物たちがつくる森」など。現在、日本動物行動学会会長、雑誌「生物科学」の編集長も務める。

(更新日:2009年11月26日)
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