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定年後の「学び直し」「再チャレンジ」の場として、立教セカンドステージ大学の構想が語られ始めた時、「男性のための大学」がイメージされているような気がして、何だかシニア層の男性ばかりが集まる大学なんて気持ち悪いなと思っていました。ところが実際にふたを開けてみると、受講生の男女比はほぼ半々、バランスがとれています。男性には「大学は一度出たけれどもう一度学びたい」という方が多く、女性にも、大学進学率の低かった時代に大学を卒業した方や、職業人として定年まで男性に引けを取らない活躍をされてきた方もいました。と同時に「兄も弟も大学へ行ったのに、私だけ女という理由で行かせてもらえなかった」「これまで家庭を守ってきたからこそ、今度は私の番」と、ずっと学びに対して無念の涙を流していた女性たちも門をたたいてくれました。
1年間の本科課程を経て、専攻科に半数近い人が進みました。大学院へ進学した人もいます。本科の1年でウオーミングアップしてさらに前へと進んでいくシニアの方の姿は、本当に感動的ですらあります。
それにしても、あの世代の男女がいま同じ学びの場にいるのは結構おもしろいものです。男性は仕事、女性は家庭を守るといった典型的な性別分業の中で生きてきた世代だけに、対等の経験が非常に乏しいんです。ですから、ゼミでも男女別々に座ったり、ゼミの後の食事や飲み会に男性だけで出かけたり。ゼミ長も最初の年は全員男性でした。そう考えると、シニア世代が「学び直し」をするということは、あの世代特有の男女関係の再構築にもなっているのかもしれません。はしゃぎながら新しい関係を育てている、新たな男女共同参画社会の始まりのようでもありますね。

私が担当している授業のテーマは「超高齢化社会論」。人口構造の高齢化、個人の高齢化(長寿化)、社会そのものの高齢化(成熟化)がもたらしている経済社会の変化、ライフスタイルの変化、家族・地域社会における人間関係の変化などを考察していく内容になっています。たとえば、超高齢化・少子化社会と言われているけれど、地球全体で考えると実はまだまだ人口が増えていること、社会全体が成熟化していく中で、同性愛者や性同一性障害の人々などセクシャルマイノリティーの生き方や存在感はどのように変化したのか、また、生殖医療が急速に高度化しているけれど、それによってどのような現象が起きてくるかなど、会社や家庭ではなかなか得られない知見を「超高齢化社会」という視点で取り上げています。
事実を情報として提供するだけでなく、新しい視点、新しいモノの見方で、受講生たちを刺激していくことが大事だと思いながら授業を進めていますが、「高齢化社会のことを知っていると思っていたけれど、実は全然知らなかったことに気づいた」とか、「地球全体の問題として考えたことはなかった」などと感想を言われることも多く、こちらとしても非常に手ごたえを感じています。実際、同年代の彼らに授業するのはとても刺激的です。何かあれば、食らいつくような表情で迫ってくるし、それは違うんじゃないかと思えば、そのような顔をする。反応は20歳前後の学生たちよりもむしろ鋭敏で、こちらがドキドキするほどです。
すっかりシニア世代に触発され、時間的に余裕ができたら、いつか私自身もまた生徒側に戻りたいと思うようになりました。実は語学はあれをやろう、楽器ならこれを学ぼうとすでに計画済みです。本気で学んでいる人を目の当たりにしていると、自分も学びたくなる、何かしたくなる。これもまた人間の本性なのかもしれませんね。
(聞き手:井上理江 写真:安藤由華)
立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科教授。東京大学文学部社会学科卒業後、東京都民生局(現福祉保健局)勤務。同局を休職し、米国留学。ハーバード大学教育学大学院修士課程修了。日本社会事業大学専任講師、同助教授、教授を経て、90年4月から07年3月まで立教大学社会学部教授、同大学院社会学研究科教授。07年4月より現職。著書に「現代家族のルネサンス」「地域社会―施設コンフリクト」「社会福祉論」「貧困・不平等と社会福祉」「居場所を取り戻そう、男たち」など。

(更新日:2009年12月10日)
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