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学びて生きる

Vol.4 学びが「個」を目覚めさせる〜千石英世さん

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メルヴィル「白鯨」の翻訳をはじめとするアメリカ文学の研究、そして日本の近現代文学の評論家として知られる千石英世さん。「学びは普遍的なものであり、つかむべき教養の得心は年齢に関係なく同じもの」という。その真意をうかがった。

教養とは深く突きつめながら「自分の世界」を築いていくこと

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第一線で活躍している方の多くは、毎日が忙しくて、入ってくる情報もマスメディアを通したものがほとんど。ベストセラーやビジネス書は読んでいても、知られていない世界を知ろうとする機会はあまりなかったのではないでしょうか。

教養とは今まで知らなかった世界を知り、深く掘り下げながら、自身の世界を築いていくことです。特に、それまで組織の中で活躍してきたシニア世代は、新たな世界を知ることで「個」に目覚めることができる。肩書き付きの人間ではない自分が見えてきます。

私自身、文芸評論家としてこれまで数多くの近現代作家の作品を取り上げてきました。主な研究対象というのは、あまり世の中に知られていない、けれど晩年になって、底光りするような芸術的作品を残した作家やアーティストばかりです。三島由紀夫や中原中也などといった天才肌の作家みたいに、華々しいものはありません。でも、独特の渋みがあります。彼らの生き方、心の変容が実におもしろいのです。マイナーな作家たちの作品を目の当たりにしていると、いや応なく「じゃあ、お前はどうするんだ」という、生々しい問いを突きつけられます。この問いかけが人生のスパイスとなり、新たな自分の可能性を広げてくれます。時間的にも余裕がある人にはぜひ、人が知らない、ベストセラーではないマイナーな世界へ手を伸ばしてもらいたいと思います。

学びによって新たな人生のプラグが見つかる

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60歳の人が再び大学へ入って学ぶ。そのメリットは何か。私は、若い頃に再接続できる、つまり20代のある地点に人生を接続し直せることだと思います。何十年と実業の世界にいたことは大切な人生です。でも、大学で学び出すと、ある時期を境に「学び」を中断していたことに気づく。で、同時にそこにつながった、新たな人生への接続ができたというのがわかる。たとえば、22歳で大学を卒業した人ならその翌年、23年目が再び始まるというのでしょうか。そして、新しい人生の接続場所、別プラグが見つかる。今までの人生とは違う新しい回路が開けて、新しい血流が生まれます。

もちろん、それで具体的に形に見えて何かが変わるわけではありません。ただ、「配偶者と以前よりもよく話すようになった」「文章を書いたことがなかったけれど、大学で学び直したら、文章を書くのは相変わらず苦手だけど、書くこと自体は怖くなくなった」といった、目に見えないけれど人間にとって大切なものが変化していく。そして、そこから次にやりたいことも見えてきます。

シニア層に読んでもらいたいお薦めの本

「エセー」

「エセー」

フランスの思想家、モンテーニュが残した「エセー(随想録)」。若い頃から今も時々読んでいます。ごくありふれた日常的なことから徐々に深いところに入っていき、平易に読めるのがいい。寝転んで読んでいたのが、ちょっと起き上がり、気づいたら背筋がピンと伸びている、そんなふうに気分をシャキッとさせてくれます。若い時、読んだという人も多いと思いますが、今改めて読んでみてどのような感想を持つか、聞いてみたいです。

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著者:ミシェル・ド・モンテーニュ
出版社:白水社
価格:1巻から3巻まであり、
1巻2100円、2巻2205円、
3巻1995円(税込み)

こちらから購入できます

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