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美味しいものを食べるより、ものを美味しく食べよう――。
料理評論家・山本益博さんが気軽に訪問できる東京の名店を紹介しながら、食のマナーも一緒に学びます。さらに、限られた条件下で料理をキレイに撮影するコツもお教えします。
最終回となる今回は、見た目も美しい「マクロビオティック」料理のレストラン、白金台「ラ・ロンジェヴィテ」を訪問しました。

若い時分から「美味しいものを食べるより、ものを美味しく食べたい」をモットーにしてきましたので、素材より調理に興味を抱いて、わたしの関心の的、情熱の対象はほとんど食材ではなく料理人の仕事ぶりでした。 ですから、30年以上にわたってプロフェッショナルの料理を食べ込んできても、たとえば無農薬野菜とかベジタリアンといったものには、正直、興味がわきませんでした。
ところが、ひょんなきっかけで「ラ・ロンジェヴィテ」で大豆ミートやおからコンニャクを使っての「お見立て料理」を食べて、健やかに生きるための食事にがぜん関心を抱くようになりました。
「ラ・ロンジェヴィテ」とは「不老長寿」という意味で、店名を考え出したオーナーがレオナルド・ダヴィンチの書いた文字を組み合わせて、店の書体にしています。

そのオーナーが体調を崩されたとき、フランス料理のシェフ櫻井澄人さんが勉強し直してオーナーのための食事として提供し始めたのが、動物性たんぱく質を使わない、つまり、大豆ミートやおからコンニャク、薬草などを使った「マクロビオティック」料理でした。
「マクロビオティック」は横文字ですが、日本が発祥だそうで、動物性たんぱく質ほか精製された食品も使用せずに調理すること、櫻井シェフに言わせると「ストレスをためない生活のための食事」なのだそうです。
櫻井シェフが豚肉の代わりにおからコンニャクで作った「酢豚」が傑作です。見た目、食感ともに中国料理の「酢豚」そっくりで、初めて食べたときすっかりだまされてしまいました。 「ハムカツのサンドイッチ」もそうです。ハムカツは子供の頃に食べた懐かしい食べ物ですが、まさかこの店で再会しようとは思ってもみませんでした。
大豆ミートで精妙に作られ、それが衣をつけられて揚げられカツになり、ソースが塗られてサンドイッチになると、これが「お見立て」料理とは思えない美味しさで、昭和30年代に小学生だったわたしは懐かしさがこみあげてくるんです。ついでに言うわけではありませんが、「ひじきとおからのコロッケ」もわたしのお気に入りの一品です。
ひじきもおからも子供の頃は苦手な食べ物だったのですが、いまとなっては大好物。人間の味覚、嗜好(しこう)などというものは歳を取るにつれ随分と変わるものだなとつくづく思います。


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