川崎さん トイレは、おざなりにすれば、すぐに生活臭のでる場所ですが、誰にもじゃまされない白いキャンバスととらえれば、空間の在りようは大きく変わります。
例えば大きな緑の葉や、小さな彫刻などを一つ置いてみて下さい。その美しく、凛(りん)とした空気は、空間全体に心地よい緊張感を与えてくれます。トイレは小さな美術館になりうる場所なんです。
白でまとめたシンプルなトイレは、「旅の思い出」をテーマにしつらえました。仲間と飲んだシャンパンのコルクも、パネル仕立てにすれば立派なアートになります。美術館で見つけたポスターを飾り、実際旅先で使った地図も置いてみました。アートは、高価なものでも、わざわざ手に入れるものでもありません。自分の個性を表現するものこそがアートなのです。

こちらの黄色がアクセントカラーになったトイレのテーマは、「家族のコミュニケーション」です。棚に小さな動物のオブジェを飾りましたが、最初はきちんと置いていても、必ず誰かが動かすでしょう。そっぽを向いていたかと思えば、ある時は円陣を組んでいるかもしれません。「しまった、やられた」「私はこうしてみよう」と、お孫さんも含めて、家族全員で楽しめるでしょう。

こうしてしつらえた当初は美しい緊張感がありますが、慣れてくると、次第にその空気は薄れてきます。絵やグリーンを替えるなど、常にアクションを起こしてトイレを美しく調えていると、ポリシーは家中に伝播(でんぱ)し、リビングや寝室など、他の部屋の質も不思議なほど上がっていきます。

川崎淳与(かわさき あつよ)

20年近く工芸の企画プロデュースを手掛ける。1998年に東京・南青山に「ギャルリーワッツ」をオープン。以降、精力的に国内外の個性的なアーティストの企画展示を行っている。著書に「おしゃれにラッピングブック―楽しい工夫でまごころを素敵に伝える 贈り上手のギフトアイデア」(大泉出版)などがある。
ギャルリーワッツの公式サイトは http://www.wa2.jp/

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