とことこと、黒い小さなクルマが緑の中を行く。急ぐ車列をやり過ごし、時には停まって景色を眺めながら、ゆっくりゆっくり。
神奈川県に暮らす佐々木穂積さんと妻の玲子さんの長年の相棒は、国内に数台しかないというモーリス・マイナー・トラベラー。1963年製造のクルマにはエアコンもラジオもなく、夏の暑さ対策は窓からの風だけが頼り。スピードは時速80キロメートルがやっとというノンビリ仕様だ。 「高速など走っていると、お、頑張ってるな、と優しい目で見られたりします」
修理を繰り返して20年間乗り続けているというこの愛車で、晴れた休日にはキャンプに出掛けるのが2人の楽しみ。デザイン会社でクリエイティブディレクターを務める穂積さんは、キャンプの達人だ。ときにはテントを積んで遠出もするが、ふと思い立って日帰りで出ることもしばしばという。
夫婦2人だけなら目的地へ急ぐ必要もない。気持ちいい空間があればどこでも、クルマに積み込んである折り畳み椅子(いす)を出し、草むらにセットしてちょっとひと休み。

「これが、デイキャンプ実践第一段階かな。特別な道具なんて何もなくても、ポットに入れたコーヒーと椅子さえあれば、後は花や鳥を眺めたりして、ひねもすゆったりするのが心地いい」
お気に入りのキャンプ場に着いたら、今度はリクライニングチェアを出し、簡単なサンドイッチなど作って、ランチ&お昼寝タイム。これは、デイキャンプ実践第二段階。
「小さいコンロひとつ持って行けば、温かい飲み物も作れます。もう少し本格的にするなら第三段階としてテーブルやバーナーを出して料理を楽しむのもいい。こうして自然の中で過ごすっていいものでしょ?」
見ていると、なんだかとても優雅だ。
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