住みはじめて8年目の今も、建物の改装はまだ続いている。2年前に妻の母親と同居するようになってからは、1階の間取りを変えた。また、コンクリートむき出しの天井は、夏の暑さ、冬の寒さがあまりにこたえ、昨年ようやく板を張った。
「生活してみてこそ、必要なことがわかってくる。そうやって少しずつ、暮らしに合わせて家を変えていく感じですね」
住まい自体が趣味の延長ともいえそうな百瀬さんだが、仕事で多忙な中、ほかに熱中していることはいくつもある。
ひとつは車。家の表に停めた愛車は、チェロキーと、73年型ジャガーEタイプの2台。このジャガーは、中学生のころに雑誌で見た憧(あこが)れの車だ。10年前、たまたま修理工場で見かけて、家族の反対を押し切り、100万円かけてエンジンを直した上で購入した。
「レストアせずに、内装もそのままで乗ってます。これで仕事に行くと、大変不評なんですけど……」

もうひとつはジャーマン・シェパードのナナ。まだ1歳半、いたずら盛りの愛犬は、主人のそばをかたときも離れない。これまで絶えることなくさまざまな犬種を飼ってきたが、
「20代でヨーロッパからインドまで車で旅した時、同行したスイス人夫婦が連れていたのがシェパードでした。それ以来、いつかはシェパードをというのが夢だったんです」
高齢になると、力の強い大型犬は飼いきれない。50代の今ならまだ、という判断だったそうだ。

写真でも現在、意欲的に取り組んでいるテーマがある。ニューヨークをはじめとした都市の風景を、和紙に印画した情感豊かな作品群だ。
「デジカメ全盛時代の今だから、35ミリフィルムで撮り、わざわざ和紙に焼くという仕事をもっともっと追求したいんです」
あえて手間をかけることにこそ喜びと発見がある。それは、家も趣味も仕事も同じ。百瀬さんの生き方の根幹なのだ。


建物に入る私道をよく見ると、犬の足跡と「14.NOV.'98」の文字が。これは、引っ越してきた日に、生乾きのコンクリートを当時飼っていた犬が歩き、跡をつけたもの。新居の記念に小枝で日付を彫った。

百瀬 恒彦(ももせ・つねひこ)
1947年長野県生まれ。デザイナーをめざして武蔵野美術大商業デザイン科に籍を置いたが、在学中からカメラを手にヨーロッパや中近東、アメリカ大陸を放浪。卒業後にフリーランスの写真家となる。雑誌「モア」「コスモポリタン」「家庭画報」「婦人画報」「ミセス」などで、主にポートレートなどを手掛ける。また、和紙に焼いた作品にも取り組んでいる。最新の写真集は「そして海老蔵」(世界文化社)。

文 :秋川 ゆか
写真:長尾 浩之
(更新日:2006年08月18日)
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