最初は茶の湯で使う茶わんを作ろうと考えた。たまたま友人たちと茶会を催したのがきっかけだった。そこから、自分で使いたいと思える食器にも少しずつ取り組むようになった。
「たとえば自分の家で女房が作った料理を盛るのに、量産品では味気ない。作家物を見ても、当時は日用使いには不向きな工芸品的なものがほとんど。なぜ、その間を埋める作家がいないのだろうかと」
彫刻から行き着いた器作りだから、形も作り方も伝統的な決まりごとから自由だ。そのぶん手探りの連続でもある。ヨーロッパの古窯(こよう)の品に学んだりもした。こうして、雅信さんならではのスタイルは徐々に形になり、ギャラリストや雑誌編集者の目に止まるようになっていった。
「美濃焼産地に生まれて、音楽、絵、彫刻、絵画塾と、すごく遠回りして焼きものに行き着いた。小学生の時、芸術を将来職としたいと願い、30歳代は、何度、このままダメになるんじゃないかと思ったことか。いつも背水の陣続きなんです」

今、作品は全国のギャラリーでも人気。個展も各地で開催する。作家として、また百草店主として多忙な毎日だが、加えて若い作り手への支援も続けている。MAVO(ももぐさアートビレッジ&オフィス)と名付けた貸し工房では、現在19人の若者たちが制作に励む。何人かはすでに、器好きの間で名を知られはじめてもいる。
では仕事の手を離れた時間は?
「まず庭の手入れ。家の外は僕の担当だから。草取りと水やりで1時間くらいはかかる。樹木も毎年ちょっとずつ増やしてます」

敷地に茂る木々や野草には、鳥が運ぶ種から増えたものも多いそうだ。音楽も、今でも趣味のひとつ。家にはアコースティック、工房にはエレキギターを置き、時間をみてはつま弾く。そして、最近がぜんおもしろくなったのが車。
「昔は車趣味とは無縁のつもりだったんだけど。1年前に85年型のベンツのワゴンを安く手に入れ、すっかり目覚めました。ドイツの職人魂を感じるんだよね」
近所を走るのはもちろん、東京や四国までもこの車を飛ばす。
「運転してると日常を忘れる感じ。ひとりで乗る時は、窓を閉めて大音量でファンクを流すんですよ」
楽しげに話す表情は、今も変わらぬ反骨音楽少年そのものである。


雅信さんの物持ちの良さは驚くばかり。このギターは大学時代に手に入れた。もとは流しのギター弾きの持ち物で、キラキラと螺鈿(らでん)が光る。大学1年で買った石油ストーブや、2年の時に拾った照明器具も、今もしっかり現役だ。

安藤 雅信(あんどう・まさのぶ)
1957年岐阜県生まれ。陶工、ギャルリ百草店主。青春期は、中学1年のフォークブームを経て、ロックやジャズに親しむ音楽少年として育った。武蔵野美術大学彫刻科卒。現在は日用の器や茶道具、彫刻を制作しつつ、展覧会等の企画も手掛ける。妻の明子さんは衣作家。
ギャルリ百草 岐阜県多治見市東栄町2-8-16 Tel:0572-21-3368
ギャルリ百草の公式サイトはこちら http://www.momogusa.com/

文 :秋川 ゆか
写真:川崎 太郎
(更新日:2006年10月06日)
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