毎月のバンド活動を楽しむ慎一さんだが、妻の祥子(さちこ)さんもまた、旺盛な探求心で自分自身の生き方を切り開いてきた人だ。
祥子さんが慎一さんと出会ったのは大学時代。祥子さんの兄が慎一さんと大学の同級生だったのだ。鎌倉の実家にはいつも大勢の若者が集まって、皆で踊ったり歌ったり。「カントリークロップス」が誕生する過程もつぶさに見てきた。
独身時代から料理教室を主宰する母を手伝っていたこともあり、料理は得意だった。結婚し、やがて子供たちに手がかからなくなると、自宅で教え始めた。松花堂(しょうかどう)弁当を基本に季節のしつらいを加えた内容は、多くの生徒を集めた。月に10クラスの教室は、20年ほど続いた。

「でも、準備まで含めるとかなりの日数を取られ、いつも追われている気分になってきて。なにか全然違うことをしてみたいと思ったんです」
6年ほど前、すっぱりとやめた。そして、別のなにかを探すうち、ふと気になったのが母の世代もめっきり袖を通さなくなっていた古い着物だった。しゃれた色柄は多いし、そのまま古着として捨てられてはあまりにもったいない。この生地を、洋装にも合うバッグに仕立ててはどうか――。
「手仕事は好きだったから、試しに作ってみると、けっこういい雰囲気のものができました。おもしろくなって、どんどん作りためるうち、人様にも見ていただけたらいいな、と」
展示会を開いてみると、買ってくれる人もいる。好きではじめたことを評価してくれる人がいるのはうれしい。今では、東京と大阪で毎年個展を開く。「古布バッグ作家・峰岸祥子」として、多くの新しい出会いも生まれた。

祥子さんのチャレンジは、それだけでは終わらない。かつて料理を教えていた生徒たちから、また要望の声が上がるようになったのをきっかけに、料理教室を再開したのだ。しかし、開催日も3ヵ月に1度とごくゆるやか。教える内容も、以前のような本格的な日本料理ではない。和洋中、ジャンルはさまざま。市販の合わせ調味料や半調理品も使って、早く簡単に、誰でもおいしくできる。
「今の時代、できるだけ手間を減らして簡単に……というものが求められている気がするの」
料理が苦手な若い世代だけではない。高齢者たちにとっても、料理は手軽なほうが喜ばれる。生徒も着実に集まってきた。こうして祥子さんの忙しくとも充実した日々は続く。

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