深夜放送に携わっていた頃は昼夜なく働き、家族と過ごす時間も少なかった慎一さんだが、社団法人音楽事業者協会の専務理事となった今、しっかりとオフタイムを楽しむ時間ができた。
4年半前からは、一戸建の自宅を出て都心のマンションでの2人暮らし。祥子さんが整えたインテリアは、古いものと新しいものがほどよくミックスされた独特の心地よさだ。
2人で楽しむ趣味などもできたのだろうか。

「いや、僕の趣味はバンド以外は酒とゴルフだけで。土日も晴れたらいつもゴルフですよ」と慎一さん。
「ライブは最初の頃に一度だけ見に行ったけど。もう、行かなくてもいいかな」。祥子さんもけろりと笑う。
と言いながらも、休暇に夫婦で海外旅行に出掛けるのは、多忙な頃から続く習慣だ。旅行先のケニヤやチベットで見つけた作品が、住まいのあちこちを飾っている。
最近は、娘が住むハワイをよく訪れる。行くといつも、娘夫婦や孫と一緒に磯に出る。天然の海水塩を採るのだ。
「岩場の潮溜りが陽を浴びて、塩分が結晶しているの。すくってきれいに煮詰めると、いい塩ができるのよ」
出された塩をなめてみた。ほんのりと甘みがあって、おいしい。日本に持ち帰って毎日の料理に使っている。塩以外にも、ハワイでの収穫の楽しみはいろいろだ。山のハイキングコースに落ちているグァバは、風味のいいジャムになる。「塩もグァバも、たくさん採れるともう、金塊を見つけたみたいにうれしくてね」

目を輝かせて語る2人の話を聞いていると、好奇心や探求心というものの大切さに、いまさらながら気づかされる。
50数年の歳月を経て、若い日の仲間たちと共に、変わらぬ思いを音楽に託す慎一さん。自分の好きなもの、やりたいものに今もチャレンジし続ける祥子さん。若さとは決して、年齢ではない。


いつも慎一さんが座る椅子のそばに、2人で行った旅先で買った小さなロボット人形が。祥子さんが気に入って飾ったのだが、1年以上が過ぎた取材日に、慎一さんは「今、初めて気がついたよ」。家のインテリアに興味ゼロとはいえ……!

峰岸 慎一、祥子(みねぎし・しんいち、さちこ)
慎一さんは1937年東京生まれ。文化放送に入社し、会長まで勤めあげる。現在は、社団法人音楽事業者協会専務理事。学生時代に結成したカントリーバンド「カントリークロップス」の活動を再開、毎月1回のライブを楽しむ。
妻の祥子さんは古布を素材にユニークなバッグを制作、年1回の個展を開く。自宅での料理教室も主宰する。

文 :秋川 ゆか
写真:長尾 浩之
(更新日:2006年10月20日)
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