子供のころからもの作りが好きで、デザイン全般に取り組む中から建築を手掛けるようになった悟さん。陶芸を本格的にスタートしたのは16年ほど前のことだ。 「以前にも知人宅で作ってみたことはあり、興味はあったんですが、当時は仕事が忙しく余裕もなくて」
40歳になりゆとりも出て、何か仕事以外のものをと思った時、ふと浮かんだのが、自分で作った器で食事をする風景だった。さっそく、基本を身につけるためカルチャーセンターへ。もともと創造的な作業は好きだったし、新しいことに挑戦するのは楽しい。習い始めて1年目に全日本アマチュア陶芸コンテストで佳作、2年目には優秀賞を受けた。
「それで、別荘を建てることになった時、当然、焼き物を作る場も持ちたいと考えました」

蓼科は悟さんが子供のことから親しんだ場所だ。休みのたび、建築家だった父が作った別荘に行き、きょうだいそろって山で遊んだ。その建物を兄が継いだ今、他のきょうだいもそれぞれ、愛着のあるこの土地に別荘を持つようになった。都心で育った治子さんも、豊かな自然の中で過ごす休暇に異存はない。町の土地を借り、周囲の林を生かして、この小さな別荘を建てた。

アトリエがあれば、家族も土に触れるようになる。治子さんも最初は、好みのものを悟さんに作ってもらうつもりだったそうだ。ところが、やってみるとおもしろい。 「欲しいと思う花の器はなかなかなくて。それなら自分で作るのもいいかな、と」
夫婦で作る品は少しずつ増え、いつの間にか、食卓に並ぶ器のほとんどが手製のものに入れ替わった。今はカナダに留学して絵を描いている長女の祥子さんや、同じくアートの道に進む次女の風子(ふうこ)さんの作品も、住まいと別荘のあちこちに飾られている。
制作のあい間には、山を歩いて山菜や木の実を採ったり、目の前に広がる北アルプスの雄大な景観を眺めたり。
「空気も水もおいしいし、たとえ一泊しかできなくても、ここに来ると本当にリフレッシュできます」と治子さん。
ここで過ごす喜びのためには、片道3時間の道のりも決して苦にはならない。

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