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Vol.11 建ったのは大正末期と昭和初期 2つの古建築をドミノ式に「再生」 若林広幸さん・松永智美さんを訪ねて

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古きよき伝統を現代に取り入れて

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玄関に据えた階段箪笥の色合いも美しい

広幸さんの設計デザインと、智美さんのジュエリー作品。どちらもコンテンポラリーな表情を持ちつつ、人の五感になじむおだやかさを感じさせるのは、2人が京都の町中で生まれ育ったことと無関係ではないかもしれない。

実際、夫婦ともに古いもの、伝統あるものが好き。事務所を再改装した住まいには、和の雰囲気の塗り壁や古材風の柱と、金属壁の硬質さがほどよく主張しあう。玄関から2階へは、どっしりとした階段箪笥で上がる。元は西陣で使われていたという古いものだ。リビングの壁につけたニッチには、古い石仏や陶器。キッチンを見れば、自分たちで左官仕事に挑戦したという大火鉢が据えられている。金網に乗っているのは、老舗道具店と共同で作った銅の蒸し鍋。こうした生活道具の提案も、料理が得意な智美さんの最近の仕事だ。

「京都には、そういう仕事ができる職人がいはるから」

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キッチンの大火鉢は焼物や鍋物に

趣味は食べること、という智美さん。海外に出る時は、タッパーやジッパー袋が必需品だ。帰りには、スーツケースの中は、仕事のあいまに市場やスーパーで買い求めた食材でいっぱいになる。行く先々で覚えた味を、わが家で再現して家族や友人にふるまうのだ。そんな日、手作りの大火鉢もときに活躍の場を得る。

広幸さんの趣味は骨董。中でも中国古代の銅鏡や仏像が収集の中心だ。室内に飾った品は、コレクションのごくごく一部。

「これは中国に仏教が入って間もない、六朝の頃の仏像。ちょっととぼけた表情がいいでしょ」

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卵型のニッチに飾られた六朝の仏頭

10年ほど前に知人の骨董店で見た銅鏡の輝きにひかれたのが、そもそものきっかけ。以来、骨董市をめぐっては、片っ端から買い集めた。

「安かったんですよ。でも結局、ほとんどニセモノでした」

その後、信頼できる骨董屋に出会い、多少は目も効くようになった。このごろでは、休日の楽しみは同好の士の集まり。皆で自慢の品を持ち寄り、酒を酌み交わしながら、わいわいと見せ合う。

「小遣いで買える程度のものばかりですが、けっこう集めましたよ。でも、どれだけ持っているかは恐くて言えません」と笑う言葉に、智美さんも「私も恐くて聞けません」。

互いに多忙で、家を空けることも多い2人だからこそ、住まいはそれぞれの趣味を生かせる心地のよい空間に。建て壊しをまぬかれ、見事によみがえった古い建物は、そんな夫婦の日々を静かに包み込む。

こぼれ話…

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周囲を壁に囲まれた坪庭に、なぜかネコが4、5匹。近所のノラネコが、塀を伝って遊びに来るのだ。「今日は撮影用に呼んでおきました」と智美さん。代々、親が子を連れてきて、もう5代目くらいになるとか。広いガラス窓越しに見える姿は、ちょっと動物園感覚?

PROFILE

若林広幸(わかばやし・ひろゆき)

若林広幸(わかばやし・ひろゆき)

1949年京都市生まれ。京都デザイン(株)で商品開発、企画デザインに携わった後、独立。インテリア設計事務所を自営しつつ我流で建築を学ぶ。82年に若林広幸建築事務所設立。91年文化デザインフォーラム・文化デザイン賞他受賞。「京の町家学生設計コンペティション」の監修・審査委員長も務めている。

松永智美(まつなが・ともみ)

松永智美(まつなが・ともみ)

1954年京都市生まれ。京都で早くから現代美術のギャラリーを開いた母・松永ユリさんのもと、アートに身近に触れて育つ。舞台コスチュームの企画を経て、箔をほどこした麻や竹を使うオリジナルジュエリー制作へ。国内外での展示会活動多数。おいしい物好きで旅行好き。

  文  :秋川 ゆか
写真:佐川 幸治

(更新日:2006年11月17日)

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