リストランテ・ラ・パストラーレ。イタリア語で「田園のレストラン」という意味だ。2、3か月に一度、東京・田園調布の小さな住まいで催される食事会。インテリアデザイナーであるこの家の主(あるじ)、吉田富一(とみかず)さんがシェフを務めるその日を、心待ちにする友人たちのいかに多いことだろうか。
冬の日の夕刻に吉田邸を訪ねた。
到着すると、吉田さん夫妻はテーブルセッティングの真っ最中。予想以上にこぢんまりとしたDKの、6人掛けのダイニングテーブルがいつものもてなしの場だ。夫婦が座る席を考えれば、招く友人は毎回4、5人程度が限度なのだという。テーブルに敷いたペーパーマットは開催のたびにパソコンで作る。カトラリーやグラスも料理に合わせて選び、妻の佐由子(さゆこ)さんと手分けして並べる。

「最初の料理はシャンパンに合わせるからフルートグラスを出して」
「グリルには四角い皿を使おうか」
テーブルを気づかいながらも、下ごしらえをすませた料理の仕上げがはじまる。自らの設計でリフォームしたというキッチンもまた、驚くほど狭い。テーブルのすぐそばに据えたシステムキッチンは、市販品では最小の1.95メートル幅。アパートサイズと言ってもいい。コンロとシンクとわずかな調理台を確保しただけのこのキッチンで、富一さんは自慢の創作イタリアンの腕を振るう。

今日のゲストは4人。席にそろうと、まずは突き出しで乾杯だ。小さな器に盛った白エビのマリネとカボチャのあえものは、どちらも意表を突く味わい。聞けばマリネにはミカン、カボチャにはゴルゴンゾーラチーズを加えているのだとか。ついついシャンパンが進む。
次は、トマトや生ハムのカプリ風白あえ。白あえと言いつつ、豆腐ではなくモツァレラチーズを使うのがユニークなところだ。さらにボルチーニ茸とフォワグラの濃厚なスープが出て、吹き寄せ風に盛り付けた根菜のマリネへと続く。冷えた白ワインが空き、赤ワインの栓が抜かれる頃にはテーブルの会話も盛り上がり、初めて会った同士もすっかり打ち解けた様子。富一さんは、席について飲み、食べ、またキッチンに立っては次の料理を準備する。
「僕はとにかく食べるのが速いから。みんながまだ食べている間にさっと作っちゃう」
バルサミコ酢を使った握り寿司(ずし)。鯛の塩辛のパスタ。次々と登場する料理はどれも繊細かつオリジナリティにあふれた美味ばかり。メインはなんと、ブリ大根だ。なじみの惣菜をイタリア風にアレンジした見事な手腕に、テーブルに感嘆の声が上がる。

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