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Vol.16 月に一度は庭を舞台に集まって「鉄道模型」を囲む運転会 富永一矢さんを訪ねて

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自宅庭に敷く手製レールは全長30メートル

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参加者の手製模型がレールを走る

関東では昔から、豊かな水のわき出る斜面を「はけ」と呼びならわす。武蔵野の面影を色濃く残す東京・小金井の丘陵地の一角、通称「ムジナ坂」をはけ下の道に下りる。石段の途中に、日当たりのよい広々とした庭を持つ家がある。富永一矢(かずや)さんの住まいだ。生まれ育ったこの家は、戦後の一時期には父の友人だった作家・大岡昇平も家族と共に身を寄せ、小説「武蔵野夫人」の舞台にもなったという。

正面には公園の緑地が広がり、かなたに山並みを見はらせる庭は、いつもは実に静かだ。陽だまりで近所のネコが眠り、梢(こずえ)には野鳥の声が響く。ところが、月に一度、庭の様相が一変する。毎月第2日曜の「月例運転会」開催日だ。

何を運転するのか? いわゆるHOゲージ、実物の80分の1サイズの鉄道模型を、庭いっぱいに設置したレールで走らせるのだ。

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庭で談笑しつつ過ごす月例運転会

少ない日で15、6人、多い時は30人以上もの鉄道好きが、朝から 続々と富永さん宅の庭にやってくる。この日を楽しみに、他県から数時間かけてくる人も多い。会員が決まっているわけではないし、格別のルールもない、きわめてゆるやかな集まり。参加者は飲み物を持ち寄り、庭での食事の材料費として1500円の会費を払うだけだ。スタート時間も決めていない。

「夜明けから暗くなるまで、来るのも帰るのも自由。僕が起きて朝食をとっていると、もう外でガシャガシャ動かす音がすることも多いんですよ」

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持ち寄った模型はみなの話題になる

庭のレールは全長約30メートル。富永さんが30年近く前に作ったものだ。内回りと外回りがあり、切り替え部や引き込み線もある。レールが完成したころから徐々に始まった運転会が、毎月の恒例になったのは20年ほど前からだ。集まる人々は、新参者でもすでに10年近い顔なじみ。みな、持参の模型を思い思いに走らせたり、酒をくみ交わしつつ歓談したり。「ムジナ坂」を通りすがりの人がにぎわいに目を止めて、仲間に加わることもしばしばだという。

レールはいつも、前日の土曜のうちに準備する。

「当日はみなで楽しむ日だから。前の日に一人で存分に遊んでおくんです」

ふだん、レールは分割して、庭のプレハブ書斎の脇に収納されている。わずかのスペースにぴったりと納めるワザは驚嘆ものだ。

「手伝ってもらおうにも、これは僕にしかできません。劇団の大道具をトラックに積む経験が生きているんです」

富永さんは長年、演劇界で生きてきた人だった。

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