岡山の山あい、蒜山(ひるぜん)高原の雑木林に囲まれて小さな木の家が立っている。焦げ茶色の角ログに、真っ白な漆喰(しっくい)のストライプ。扉を開ければ、低く流れ出るジャズの音。心地のいい空気の中、山並みを見渡すかなたには、銀雪におおわれた大山の姿も見える。
岡山県内で雑貨メーカーの代表を務める大槻順一郎(じゅんいちろう)さんの、一番の楽しみは仲間と一緒に建てたハンドヒューンテイストのログキャビン。仕事で海外に出ている時以外は毎週のようにここを訪れて、次のペンキ塗りの構想を練り、野山の恵みで果実酒を仕込み、夏になれば釣り上げたイワナで薫製を作る。窓から満天の星を望み、まきストーブのそばで好きな音楽を聴きながらグラスを傾ける時間もまた格別だ。

「森の中のログキャビンは若い時からの夢。20代のころには、いつか自分で建てようと思ってチェーンソーを買ったこともあるんですよ」と言う大槻さん。もちろん土地もお金もない若者に建てられるはずもない。ついに実現したのは50代もなかばを越えてから。2年前、知人の所有する土地を、買い取ることになったのだ。
「ちょうど当時は、アメリカ・オレゴン州に住む大工と親しくなり、仕事で行ったウィスコンシン州では納得のいくログ会社も見つけていた。この土地は、近くに友人も暮らしているし、釣りのできる川もある。全部の条件がぴったり合ったんですね」
自宅や会社からは車で1時間半ほど。ほどよい遠さが、日常を忘れるには好適だ。材料は、建てるならここと決めていた「ストロングウッド社」から取り寄せた。アメリカでも数少ない、完全乾燥のログ材を使うメーカーだ。建てた後のゆがみが出ないことが、なによりの利点なのだそうだ。

必要な部材が届くと同時に、ジョンのキャビンを建てようと、アメリカから2人の大工がやってきた。ちなみに「ジョン」とは、大槻さんの海外での通称だ。2×4建築専門でログ経験のなかった大工たちは、このキャビンを作るため、日本に渡る前に、ウィスコンシン州まで出向いて研修を受けてきた。
「研修のことは作業が始まってから知ったんです。その気持ちがうれしかったですねぇ。友人宅に泊まってもらって平日の仕事は彼らに任せ、週末のたびに僕も組み立てに参加しました」
一昨年秋からスタートしたキャビン作りは、3カ月以上に及んだ。歴史に残る豪雪の冬、いったん作業を休んで、ようやく完成したのは春もまだ浅いころだった。

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