若いころから、一人で体を動かす遊びが好きだったという岩上さん。しかし自転車に関しては、高校時代にレーサー車で町を走っていた程度で、その後は長年乗る機会はなかったという。高卒で料理の世界に入り、ようやく気持ちのゆとりが出た20歳すぎに、お客さんに誘われてスキーをはじめた。
「シーズン中は毎週末どこかに滑りに行ってました。皆で出かけ、夜はわいわい飲むのが楽しくてね」
スキーのできない春から秋にも、何かしたい。そこで30歳ごろには、テレビで見たスキューバダイビングにひかれて教わりはじめた。ダイビングクラブに加わり、月に一度は泊りがけで潜りに行くのが常となった。夜は料理担当を引き受け、皆で飲み会だ。
「何をするんでも、飲んだり食べたりというのが必ずセットになってるんですよ。体を動かすのは、おいしく飲むため」

しかし、飲み食いの日々が続けば当然体重も増す。服は買い替えるたびにサイズがアップし、ジーンズも1インチずつ大きなものになっていった。ある日、長女の卒園式で着る予定のスーツを出してみた。結婚当時に作ったお気に入りの1着だ。ところが前ボタンがまるで届かない。なんとかしなければ……。
自転車漕ぎマシンを買った。でも室内で黙々と漕いでもつまらない。思い切って、マウンテンバイクで通勤することにした。最初は片道10キロを行くのに40分以上。きつかった。それでも雨の日以外は毎日乗った。やがて筋力がつくと物足りなくなって、皇居1周をプラス。2周3周と増え、半年ほどで6周するようになった。100キロに近づいていた体重は70キロ台になり、卒園式ではスーツのボタンもとめられた。いつしか自転車は、大切な趣味になっていた。

そんな時、ネットで見つけたのが自転車好きたちのサイト。飲み会もあっておもしろそうだ。投稿し、オフ会に参加してみた。
「最初はハンドルネームで呼ばれるのもすごく恥ずかしかったんですが。でも、年齢もバラバラな皆で走って、食事をしたり、景色のいいところで止まったり。こんな楽しみ方もあるんだな、と」
ほとんどのメンバーは軽くてタイヤも細いロードバイクに乗っている。重たいマウンテンバイクとは、漕ぎ心地は鈍行と急行くらい違う。とりあえずは手持ちのマウンテンに細いタイヤをつけた、クロスバイクに替え、ようやくおととし、念願のロードバイクを手に入れた。
「とにかく軽いんです。たたんでバッグに入れれば肩にかけて運べる。伊豆に行った時も、足を痛めたので帰りは電車。それができるから、どこでも好きなところへ行けます」
今は「東京バイカーズ」と「バイシクルサロン」の2つのクラブのメンバーとして、遠乗りやレースに参加する。

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