「オートバイ好き」とは聞き及んでいた。しかし、訪れた住まいの玄関の奥、ガレージに続くドアを開くと……誰もが驚きの声をあげるに違いない。予想をはるかに超える広々としたスペースに、ずらりと置かれたオートバイ。いったい何台あるのか。
「今は12台くらいかな。だいぶ整理したんですよ」
持ち主である窪田祐二(ゆうじ)さんは、こともなげに言う。
「多い時は拾ったバイクみたいなのまであって、もうごちゃごちゃだったんですよ」と妻の伸枝(のぶえ)さん。
周囲の本棚はバイク雑誌やミニカー、レース写真などでぎっしり。壁にはビールやウイスキーのネオンサイン、プレート、ポスターなども並ぶ。これはもはや、ガレージと言うより趣味の部屋。あとはカウンターさえあれば、そのままバイクマニアの集うパブになりそうな雰囲気だ。見ると、ミニキッチンや大型冷蔵庫、トイレも完備されている。仲間が集まるたび、飲み物など出せるように配慮したものだという。隅に洗濯機もある。汗と油で汚れたウエアを、自分で洗うためだ。

洋酒の輸入会社を経営する祐二さんの趣味は、オートバイレース。アマチュアレーサーとして草レースに参加し続けて、すでに30年近いキャリアだそうだ。富士スピードウェイ、もてぎサーキット、つくばサーキット、SUGOハイランドサーキットなどを中心に、年間8回ものレースに参加する。ガレージのオートバイは、そのほとんどがレース用。公道を走るものではないから、ヘッドライトもウインカーも、スピードメーターやスタンドさえもついていない。
「レーシングカーというのは常に新しくなっていくから、プロ仕様のものは1、2年で価値が落ちる。我々草レーサーは3、4年落ちのものを安く買って、自分で調整して使うんですよ。オートバイを集めたいわけではなく、出たいレースのカテゴリーに合うマシンを探すんです」

プロの選手権で勝ったマシンでも、1年過ぎれば半額以下。そのぶん過酷なレースを経てボロボロの状態だったりもする。それを大切に整備し直して乗る。どれほど良い状態に戻しても、もう一度売るとなったら10万円や20万円程度にしかならない。結局、思い出深いマシンは、置き場所の許す限り手元に残すことになる。エンジンやタイヤなどのパーツを調達するためには、ごく安価な事故車を買うこともある。こうして、5年前に住まいを新築した際には十分な広さを取ったガレージが、またたく間にいっぱいになった、というわけだ。
イタリアの名車ドゥカティの996R、昨年の全日本選手権での優勝車のホンダCBR600……機能を極めたレーシングバイクは、どれも丹念な整備を経て、美しい。

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