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Vol.27 人生の楽しみを広げてくれたのは 古き良き「ベネチア」との出会い 角井功さん・典子さんを訪ねて

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ついにオペラ公演のプロデュースも

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舞台での功さん。帽子と上着は典子さんの亡父のもの

フォナ家を訪ねはじめてからというもの、ベネチアを拠点に、年を追うごとに知人の輪も広がっていった。功さんがオペラの歌に挑戦するようになったのは、そうした出会いの場を盛り上げようというもくろみからだった。

ほとんどイタリア語のわからない状況で、誰かの家で乾杯の場面となったとする。そこで「椿姫」の「乾杯の歌」でも歌えば……。

「つかみはOKという感じでしょ」

若いころから時々、オペラ観賞に出かけてはいたが、歌の経験はないし、楽譜も読めない。だが声の大きさには自信がある。なにしろ中学・高校時代は野球少年。法政二高を相手にピッチャーを務め、ノーヒット・ノーランの快挙まで成し遂げたという。

「おかげでその後もずっと、体育会系オペラと言われ続けるわけですが」

CDを聴き、耳で覚えた。「乾杯の歌」はもちろん大好評だった。日本を知る人の少ない山の村に行った時は、お前はサムライか?と尋ねられた。サムライは職業ではありませんと答えたのち、「トゥーランドット」のアリア「誰も寝てはならぬ」を歌った。皆の驚くまいことか。

「聴いていたおばさんが、今のは日本人が歌ったんですよぉって村じゅうに声を上げたくらい」

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チラシやパンフレットもデザインした

そんなころ、典子さんはイタリアでオペラ歌手として活動する同級生に再会する。チラシやポスターのデザインを引き受けるうち、杉並公会堂でのガラコンサートの企画の話も来た。合唱団を結成し、功さんもその一員となった。

「アマチュアといえども本物のオペラのかっこよさを伝えたいと思って。ソリストも制作スタッフも一流のプロに依頼し、スポンサーも探して。究極の道楽ですね」

典子さんが中心となってプロデュースにかかわり、年1回、4年間の公演を行なった。昨年でオペラは一段落。合唱団は今も典子さんを顧問に活動を続けているが、功さんも今年はいったん合唱団を休むことにした。

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マンマとの散歩の時間も大きな楽しみ

「ベネチアのマンマももう80歳。元気なうちにより多くのことを学んで、料理だけでない、ライフスタイル全般に及ぶ知恵を発信していければ」と典子さん。仕事のかたわら続けてきた絵画制作にも本腰を入れるつもりだ。

デザインの本業に加えて、オペラ、料理教室、ベネチアでの友人関係……。この10年あまり、2人の生活は思いもよらない広がりの連続だった。

功さんは「これからの10年をどうセルフプロデュースするか。今年1年間は、リセットの時期と考えています」と言う。「基本は、ムリせず生活を楽しみ、皆と一緒に人生の喜びを分かち合うこと――」。その姿勢は、変わることはない。

こぼれ話…

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功さんが入れてくれるエスプレッソコーヒーと一緒に、テーブルに登場したガラス瓶。中には小袋入りの砂糖が入っている。ベネチアをはじめ各地を旅する中で、ついつい集めてしまったものだとか。「世界のお砂糖と呼んで、来客の時などに出してます」。さまざまなデザインは、眺めても楽しいもの。「でも、うっかりすると、世界の塩も混ざってるんですよね」。コーヒーに塩はちょっとつらいかも……。

PROFILE

角井功(つのい いさお)・典子(てんこ)

角井功(つのい いさお)・典子(てんこ)

功さんは1949年神奈川県生まれ。子供のころから美術と野球が得意。デザインの道をめざして入った神奈川工業高校では、野球部でピッチャーを務め、法政二高との対戦でノーヒット・ノーランの記録を作る。プロ選手への誘いもあったが、卒業後はグラフィックデザイナーに。化粧品、ファッションなどの分野で活躍し、現在はスタジオ・ノイズ代表。典子さんは1956年福岡県に生まれ、幼少期から東京で育つ。東京芸術大学卒業後、デザイン会社勤務を経て独立。グラフィックデザインのほか商品企画、ディスプレイ、CF美術などに携わる。著書に「ヴェネツィア的生活」(マガジンハウス)。

典子さんの公式サイトはこちらhttp://www.tencos.com

  文  :秋川 ゆか
写真:長尾 浩之

(更新日:2007年07月20日)

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