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シンプルライフ

Vol.30 友人が集まる日のもてなしは 定年後にはじめた「蕎麦打ち」 山田周平さんを訪ねて

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キッチンで打ちたての香り高い蕎麦

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蕎麦の盛り付けは夫婦2人で分担

キッチンで打ちはじめた蕎麦もいよいよ大詰め。こねあがったものをのしてたたみ、細く切っていく作業になる。のし台から麺切り台に蕎麦を移し、駒板と呼ばれる板で押さえて切る。普通の包丁ではだめだ。使うのは蕎麦切り包丁。切り終えた蕎麦は、フネと呼ぶ木箱に入れて乾燥を防ぐ。

蕎麦に取り組もうと決めた時、周平さんはまず、ホビー用品の専門店で蕎麦打ちセットを買ってみたそうだ。

「でも、おもしろいことは確かですが、なんだか子供だましのような気がして、使ったのは1、2回。結局、合羽橋の道具屋街で少しずつ道具や衣装をそろえました」

5年前の秋、はじめてプロの道具一式で蕎麦を打った。

「お世辞にもおいしくなかったの。ポキポキしてつながってない」と美紀子さん。これではいけない。配合を研究し、技術を探究する日々がはじまった。

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美紀子さんの料理もテーブルに並ぶ

「休みのたびに打ち、3年間くらい熱中していましたね」

ある程度安定して打てるようになってからは、大みそかの年越し蕎麦と、友人を招いての手打ち蕎麦会が周平さんの活躍の場だ。

「お蕎麦を打つからと言うと、みなさん喜んで来てくださる。それに、ご飯ものを用意しなくていいから私もラクなの」と美紀子さんが言えば、「皆、まずいとは言えないでしょ。そこが狙いめ」と周平さんも笑う。

テーブルに並んだ手料理の数々をつまみ、蕎麦ができあがるのを待つ。料理を盛った器も、全部周平さんの作だ。オープンキッチンでは、美紀子さんがてんぷらを揚げ、ころあいを見計らって周平さんが大鍋に蕎麦を投入する。かたわらには砂時計が置いてある。ゆで時間を正確に見るためだ。ここからはスピード勝負。ゆで上がる。流水ですすぐ。盛り付ける。手渡す。蕎麦は「三たて」が肝心といわれる。「ひきたて・打ちたて・ゆでたて」でこそ。ずずっとすすれば、口中にふくよかな香りが満ちていく。

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できあがった蕎麦は手製の器で供す

「いいかげんな蕎麦打ちです。まだ毛すら生えていないくらい」

とはいっても、目の前で打ったばかりの蕎麦はさすがにうまい。

「ずっと、定年になったら企業社会のくびきから離れ、自分が理想とする生活をしたいと考えてました。決して人様の参考になるような暮らしではないですけれど」

周平さんはあくまでも謙虚だ。しかし、どのような趣味も、続けることでいっそう深みは増し、幅もひろがる。おいしい食事と多彩な会話を目当てに訪れる友人たちも増えていく。蕎麦粉をこね、陶土をこね、山に出掛け、俳句をひねる。そのひとつひとつが今、第3の人生を彩る。

こぼれ話…

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周平さんが取り出した一冊のファイル。中には、粉や水の分量などを記した紙がぎっしりと入っている。蕎麦粉は収穫したての9月中旬から1年間、少しずつコンディションが変わる。湿度など気候によっても、水分量を変えなければおいしくできない。そこで、この5年間にわたって蕎麦を打つたびにデータを取っているのだとか。食べたメンバーや、それぞれの反応も記録。失敗気味のケースも、よき反省材料になる。

PROFILE

山田 周平(やまだ しゅうへい)

山田 周平(やまだ しゅうへい)

1940年東京都生まれ。子供のころは理科系が好きだった。東京大学法学部を卒業後、三井銀行へ。1993年に定年退職して関連会社に10年間勤務する。その間に友人の誘いで、登山、俳句の会などをスタート。「ベターホーム協会」の料理教室にも通いはじめる。2003年に2度目の退職、現在は週3日の非常勤をこなしつつ、陶芸をはじめとした趣味にいそしんでいる。妻の美紀子さんは、1989年から料理とテーブルコーディネートの教室「y's table salon」を主宰。3人の娘は結婚し、現在は夫婦2人暮らし。

  文  :秋川 ゆか
写真:伊田 淑乃

(更新日:2007年09月07日)

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