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玄関のドアを開くと、上がり口には素朴な風合いのイタリア産タイルが美しく敷き詰められている。リビングに入れば、淡いグリーンと白の2色に塗り分けられた壁。床は素足に心地いい無垢(むく)材だ。天井もゆったりと高い。
明治大学講師を務めつつ、語学、経済関係など多数の著書をもつミゲール・リーヴァスミクーさんが、パートナーの広川めぐみさんとともに暮らすのは、都心にある築37年のマンション。ここは生活の場であるだけでなく、平日昼間は、友人を加えた3人で運営する会社の事務所としても機能する。オーディオ・ビデオ制作、声優派遣、翻訳、執筆など、会社の業務は多彩だ。リビングや書斎には、仕事に必要な何台ものパソコンが並ぶ。けれども、通常ならごちゃごちゃと床をはうはずのケーブルが一切見あたらない。すべて、床下や壁内に納めてあるのだ。

「3年前にこの部屋を購入し、全部自分たちで改装したんです」
作業にかけたのはわずか1カ月。近くに借りていた事務所から、仕事のあいまをぬっては通った。
「だから本当はまだ、完璧(かんぺき)には終わってない。時間があったら、もっときれいにしたいし、トイレとお風呂の壁も抜きたいんですが」
それにしてもこれは、到底しろうとのわざではない。
横のキッチンをのぞいてみると、床にはテラコッタが張られ、手作りの快適そうな調理カウンターが広がる。洗面コーナーももちろん手製。廊下の一角には、ガラスブロックをはめこんだ下がり壁もつけてある。どの空間も広々と感じるのは、もともとの天井板を抜いて高くしたためだ。

プロに頼んだ工事は、床下の給排水管と、寝室・客間床のジュート張りだけ。天井を抜くのも、床材を張るのも、壁内の配線や照明器具の設置も、なにもかもがミゲールさん自身の手によるものだ。
「難しいことではないですよ。材料も、拾ったりもらったりしたものが多いから、費用もそんなにかかってません」
最新の成果は、ベランダ一面のタイル張り。これは、100年もつという防水工事法が、マンションの大規模修繕工事を機に全戸に施されたことで実現した。
「1カ月ほど前に工事が終わって、ようやくタイルを張りました。マンション内の他の家も、好きな素材を張れるようになったんですよ」
DIYの範疇(はんちゅう)を超える本格的リフォームを、軽々とこなす2人。実はミゲールさんにとっての「家作り」の歴史は長い。日本に住んで26年、手掛けた家は7軒。今は、このマンションを含めて三つの建物に手を入れ続けているというのだ。

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