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Vol.34 もったいない精神が生んだ オリジナル木彫「割りばしアート」 小池正孝さんを訪ねて

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いつかは割りばしアートの水族館を

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残った割りばし片で小さなミノムシも

立方体はなんとかなっても、なだらかなフォルムの魚などはどうすればできるのか。正孝さんが次に見せてくれたのは、複雑な曲面で作られた小さなかたまり。「石」である。割りばしの角材を切ってブロックにして内側を削(そ)ぎ、きっちりと張り合わせてから表面を削る。こうして、どんな曲面であっても木口がきれいに出るようになる。

「イベントなどでいろいろ聞かれるから、こういうタネ明かし材料を用意しているんです。大道芸の客寄せ道具ですよ」

魚やタコも基本は同じ。割りばしで作った芯に細かなブロックを張り、全体の形が出来たら、ノコギリで何度も表面をならして丸みを出す。木口を切り落とすには、ノミやナイフは使いにくいそうだ。ノコギリの入らない細部は彫刻刀を使い、サンドペーパーで仕上げる。

こうした作業に入る前の、材料作りもけっこうな手間だ。割りばしは1カ月ほど水にさらして、しみ込んだ汚れを抜き、半年あまり天日に干す。この仕事をきちんとしておかないと、臭いやカビの原因になる。角材にする際も、それぞれの材質を見て組み合わせ、色の濃くなるもの、白いもの、両方を混ぜたものの3種類を用意する。

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オガクズとカマボコ板で作った砂地

「このごろは使った割りばしを個人で送ってくれる人も大勢います。在庫も裕福になって、カビのついているものなどははねちゃう。でも、大地震が来た時の燃料になるから、決して捨てません」

1998年に初個展、その後も各地で展示や実演をするようになったが、「物を捨てない」という姿勢は今も徹底している。切り落とした割りばしのかけらは全部保存し、大きめのものは積み上げて張り、円筒形の物入れにした。小さなかけらでは、木の葉やミノムシも作る。制作中に出たオガクズも瓶に取って置けば、海底の砂地などを表現するのに便利だ。

こうした発想は当然、環境を守る思いにも結びつく。数年前からは地域のメダカを守る活動をはじめ、さまざまな環境保護活動にもかかわるようになった。美術会の役員としての仕事、割りばしアート教室の指導などもあり、「人生で最も忙しい時期」だという。

「でも自分がやっていることに人様が感動してくれる。それがなによりうれしいし、励みになります」

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ハコフグが泳ぐ姿にも多くの苦心が

初期には、知人に贈るため、同じカレイを20匹以上作った。また、京都大学が主催した魚類の生態に関する国際会議で、記念品として依頼された60匹のヒラメを作ったこともある。でも、基本は1種1作。常に新しいものにチャレンジしつつ、いつかは割りばしアートの水族館を作るのが正孝さんの夢だ。

「魚とは、本当に美しい生きものだと思います。人間よりはるか昔からその形を完成し、自然界最善の機能美を備えているんです」

条件が整えば作りたいのはハタ。1メートルを超える巨魚だ。

「あの威厳や神々しさは本当にすごい。原寸で作ってみたいですね」

一番の条件は、制作場所と保管場所。どうやらそれは、作りかけのシーラカンスの処遇と、珠子さんの理解にかかっているのは間違いなさそうだ。

こぼれ話…

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どんなものも不用材などを利用し、工夫をこらして作り出すのが正孝さんの流儀。家の中にはマガジンラックや愛猫のドア開け防止具など、さまざまな品が見られる。中でも自慢はこのストッパー。地震の際に食器棚の戸が開かないようにするものだ。ノブを通す切り込みの不思議なカーブは、衝撃を受けても簡単には抜け落ちないよう考えた結果。家具自体には一切のキズをつけず、確実に固定できる。食器を出すたびに取り外すのは少々面倒だが、万が一の備えと思えば決して苦にはならない。

PROFILE

小池 正孝(こいけ まさたか)

小池 正孝(こいけ まさたか)

1934年東京都生まれ。幼少期に育った大森周辺も水田や川が多く、フナなどを捕っては自宅の池に連れ帰って眺めていた。損保会社に勤務ののち、56歳で退職。1年間休む中で割りばしアートを考えつく。弁護士事務所に再就職し6年間勤めた後は、制作にいそしみつつ、さまざまな地域活動にかかわる。現在は「千葉アマチュア美術会」と「平和を願う美術会」役員を務めるほか、5年前には「四街道めだかの会」を立ち上げ、在来メダカの保護活動に携わる。また、三番瀬の保全活動、印藩沼の環境回復活動なども。一昨年からは、地元の希望者を対象に「割りばしアート教室」も開催している。

  文  :秋川 ゆか
写真:山口 敏三

(更新日:2007年11月02日)

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