誰でも小さいころには、きっと一度は紙ヒコーキを飛ばしたことがあるだろう。やがてそれが、割りばしを組んだ輪ゴム動力式になったり、小遣いをためて買ったラジコンに進化したり。そして、何割かの人々は、年を重ねたのちも、空中を飛ぶものへのあこがれを失うことなく、模型飛行機作りへと没入していく。
田中光一(こういち)さんは、日本における手作りインドアプレーンの第一人者とも言える人だ。
インドアプレーンとは、室内で飛ばすことを前提にした軽量模型飛行機のことをいう。フリーフライトと呼ばれる、操縦のきかないものもあるが、田中さんが作るのはバッテリーやモーター、マイコン、センサーなどを搭載して、手元の送信機で自在にコントロールする電動タイプ。となると、いくら軽量とはいっても、それなりの重さを想像するのだが……。完成したばかりという最新作は、なんと1.093グラム! 1円玉1枚分に相当する、驚きの軽さだ。

機体自体は、それほど小さいわけではない。「A6-2号機」と名付けたプレーンの長さは33センチ、主翼の幅は30.6センチ。模型飛行機として違和感のないサイズといえるだろう。
「軽くするだけなら全体を小さくすればいいんです。でも、室内をゆったりした速度で飛ばすには、翼を大きくし、翼面荷重を減らす必要がある。機体は大きく、重量は軽く、ということを追究しているわけです」
家の中の6畳や8畳の部屋で、びゅんびゅんと高速で飛ばせば、当然家具や壁にぶつかる。ゆっくり、ふわふわとした飛行こそが、インドアで楽しむための重要なポイントだ。
「一番のテーマは、癒(いや)される飛行。このA6-2号機は、人が歩く程度のスピードで飛ばせます」
もちろん、そんな超軽量かつ大型の模型飛行機にはキットなどない。基本はすべて手作りだ。

最初に完成させた同型1号機は2.86グラム。2004年の発表当時は、日本一軽い室内電動機として大きな話題になった。胴体はごく薄いバルサ板を円筒に丸めて作り、翼部は1.2ミリ角に切ったバルサ材を枠にして、コンデンサーに使われる特殊フィルムを張った。電池は重さ0.7グラムのリチウムポリマーバッテリーを使った。韓国の専門メーカーのCEOに何度もメールを送り、ようやく提供を得た品だ。赤外線による送受信機も自作。何年もかけて、すべてのパーツをぎりぎりまで削ることで、3グラムの壁を破ることができたのだという。
それから3年。田中さんはさらに軽いパーツを求めて世界各国の情報を集め、同時に得意の電子工作の腕を磨いた。その成果は1年後の1.75グラム、翌年の1.34グラムへと実を結び、ついに1号機の半分以下という驚異的な数字へと発展していったのだ。

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