朝日新聞がビートルズ世代に贈る、こだわりエンターテインメントサイト

メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

ホーム設定

Special Contents ひと

  • インタビュー
  • フロントランナー
  • トップ
  • 地球発
  • マネー
  • ライフスタイル
  • 極める
  • からだプラス
  • エンタメ

記事を印刷

ライフスタイル

  • バックナンバー

シンプルライフ

Vol.36 究極の軽さをめざして工夫する 癒しの「インドアプレーン」 田中光一さんを訪ねて

  • ページ1
  • ページ2
  • ページ3

ふわふわと宙を進む「癒しの飛行」

写真
クラブのメンバーが集まる飛行会

3年前に完成した1号機を両手に乗せてみた。まるで重さを感じない。なにかふわっとしたものが乗っているというだけの感覚だ。次に、1.093グラムの2号機。これはもはや、重量という言葉すら無意味に思える。わずかに手を動かしただけで飛び去る、綿毛のごとしだ。

それでも、必要なパーツはすべて装備されている。

モーターは直径3.2ミリ。携帯電話の振動用に使う、世界一小さいモーターだ。これは、国内の専門メーカーに数カ月かけて頼み込んでわけてもらえるようになった。最初は10万個単位でしか取引できないと言われた。やがて、1000個ならば、という話にはなったが、まだ多過ぎるし、価格も1個2000円。社長に直接、目的を話し、ついにはひとつ520円、100個からOKという形にこぎつけたそうだ。これで、軽量化をめざすプレーン仲間にも、安心して分けることができるようになった。バッテリーは、この秋に発表された0.369グラムの超軽量型を採用。数ミリ角のごく小さな受信機は自身で開発したものだ。バルサ材は、組織が粗く軽いものを探し、より細く削った。翼に張るフィルムも、0.9ミクロンから0.5ミクロンの厚みに変えた。

これはいったい、どんなふうに飛ぶのか。

写真
悠然と飛ぶA6-2号機の雄姿

地元の体育館で月1回行う、湘南スローフライヤークラブの飛行会をのぞいてみた。超軽量の機体は、わずかな空気の動きにも影響を受ける。手に持って屋外に出るだけで壊れることすらあるという。閉めきった体育館は、飛行実験に最適の場所だ。

97回目の開催日。10数人のメンバーが手製のインドアプレーンを持ち寄り、思い思いに飛ばす。バルサ材タイプあり、発泡スチロールタイプあり。カーボンで骨格を作った、はばたきタイプというものもある。新作が登場するたび、皆がいっせいに集まる。不調が見つかれば、互いに改善のアイデアを出し合う。田中さんは、ここではいわばオブザーバー。

「今は自分で飛ばすよりもむしろ、ときどき皆さんの相談に乗る感じですね。入門者を育てながら、ゆっくり楽しめればいいんです」

写真
主翼の調節でスピードも変わる

A6-2号機を飛ばしてもらった。片手で胴体を持って、ふっと前方に押し出す。機体はふんわり空に浮かぶ。手の中に納まる小さなコントローラーで右へ、左へ。なんともゆるやかな速度。のんびりと散歩するくらいと言ったらいいだろうか。「癒しの飛行」という田中さんの言葉を実感する。ふわふわと漂わせ、手のひらにすいっと戻してキャッチする。これこそが、インドアプレーンがめざす飛び方なのか……。

「でも、決してこれで満足はしていません」と田中さんは言う。「家の中で飛ばすには、もっと軽く、もっと翼を大きくしなければ」

目標は、バッテリーを含めた1グラム切り。究極のインドアプレーン実現をめざして、世界のマニアが、田中さんの技術に注目する。

こぼれ話…

写真

市販のオーブントースター。でも、パンは焼けない。実はこれ、集積回路の焼き付け用だ。学校などから大量の受信機注文が来た際に、ひとつひとつ手でハンダ付けしていては間に合わない。「超零細企業ですが、若干の量産化を図ろうと……」。最初は台所のホットプレートを流用しようと考えたが、妻の強硬な反対にあって断念。そこでオーブントースターに制御装置をつけて、一度に熱を加えられるよう改造したのだという。「電気って本当に楽しいですよ。こんなものがあったらという夢を、全部実現してくれます」

PROFILE

田中 光一(たなか こういち)

田中 光一(たなか こういち)

1942年東京都生まれ。小学生の時から電気に興味があった。電機専門学校を出て、事務機器メーカーで勤務したのち、家電販売店へ。26歳から支店長を務め、やがて独立して電器店を設立する。模型飛行機作りは10代からの趣味。30代での中断を経てラジコン機制作を復活し、50代からはインドアプレーンの技術開発と普及に努める。湘南スローフライヤークラブ主宰。著書に「PICマイコンでつくるインドア・プレーン」「みんなで作ろうインドア・プレーン」(CQ出版)など。

ホームページは、http://www.cityfujisawa.ne.jp/~toko/

  文  :秋川 ゆか
写真:伊田 淑乃

(更新日:2007年12月07日)

前のページへ
画面トップへ

※当サイトの推奨ブラウザは、Windows Internet Explorer6.0以上、Netscape7.0以上、Firefox 1.0以上、Macintosh Safari 1.0以上となります。
Copyright The Asahi Shimbun Company. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
どらくに掲載の記事・写真の無断複製転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。

©朝日新聞社
無断複製転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。