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シンプルライフ

Vol.37 昔ながらの道具に囲まれた家で 夫婦で発行する「親戚新聞」  榎本達郎さん・眞知子さんを訪ねて

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幼少期からなじんだ道具はすべて現役

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唯一の暖房器具は懐かしい火鉢

一般には便利だとされるものでも、なくても生活できるなら持たないことを徹底する2人。だが、逆に家の中には、普通ならあまり見かけないような品がある。時代を経た道具類だ。

火鉢の横には、使いこんだ火おこしや炭入れがある。台所を見ると、配膳(はいぜん)台として使っているのは、眞知子さんの父が作ったという古い杉板のテーブル。棚には、懐かしげなデザインの食器類。どれも、建て替える前の住まいで使ってきたものだそうだ。壁には、いくつもの鍋が下げてある。よく手入れされたひとつひとつが、表面のキズやへこみに歳月をにじませる。アルマイトのカップも、ずいぶん昔に見かけたような形。眞知子さんが幼稚園のころから愛用した品だ。

「ものが捨てられないんです。だって、どれもちゃんと使えるでしょう」と言う眞知子さん。

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小さな端切れもパッチワークして使う

本棚、座卓、イス……室内の家具も古いものばかり。見渡せばこの家には、新しいものはほとんど何もない。読書に使う電気スタンドも、子供の時に買ってもらったものだ。この家を建てて以来、新たに購入した生活道具といえば、衝動買いしたという鋳物鍋二つと、仕事上どうしても必要になって今夏に導入したパソコンくらい。

骨董(こっとう)好きというわけではない。だから、わざわざ古い道具を買しうこともない。ただ単に、育った家で長く使われてきたものを、そのまま受け継いできただけ。けれどもそんな暮らしぶりが、今の時代にあってはなんとも希少だ。

ふと、ダイニングに置かれた座布団に目が行く。さまざまな柄の古布をパッチワークした、眞知子さんの手製だ。

「あ、この生地は覚えているよ。キミが20代の時に着ていたスカートだ」。達郎さんが言う。

「そうよ。こっちは中学生のころのスカート。これはおばあちゃんの着物」

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骨董ともいえそうなおもちゃが多数

納戸の奥には、たくさんの布の入った箱がある。中学生時代どころではない。中には、母が着ていた服地や、小学生の時に授業で作ったパジャマの残り布も。ほんの小さな端切れも、なにかに生かせると思うと、とても捨てることはできない。数十年にわたって保存してきた布が、今もときどき取り出されては、パッチワークスカートや達郎さんのバッグに姿を変える。

「古いものは、まだいろいろありますよ」と眞知子さんが出してくれるのは、たとえば小学生のころに兄が作ってくれた硯(すずり)箱。水墨画を趣味とした父が自分で作った墨も添えられている。今もこれを使って習字をするのが日課だ。祖父が満州であつらえた中国服もある。100年も過ぎた繻子(しゅす)の上着は、今も冬の外出着として活躍する。おもちゃの入った箱も登場。中身は、木製のグリコのおまけや昭和初期のゲームなどマニア垂涎(すいぜん)の品々だ。幼少期の眞知子さんがきょうだいで遊んだ道具を、おいやめいも楽しみ、今はその子供たちがこの家に来るたびに遊ぶ。

「母も祖母も、こうやってものを大事にして暮らしてきたから。なにも特別なことではないんです」

そうかもしれない。昔は確かにそうだった。

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