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シンプルライフ

Vol.38 植物に親しみ、たき火を楽しむ 都会と行き来する「山の生活」  田中静正さんを訪ねて

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都会で仕事をしながら、山を生活の拠点に

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東京との行き来は軽トラック

生の火を見つめる時間はいいものだ。たとえば子供時代、庭先の落ち葉を集めたたき火で芋を焼いたり、あるいは青年の日、ちらちらと燃える火を前に夜更けまで語り合ったり。そんな思い出を持つ人は少なくないはずだ。ところが今、たき火をめぐる環境はすっかり変わってしまった。

住宅地では、いかに広い庭があっても周辺の反対にあう。キャンプ場や別荘地でさえ、じかに火を燃すのを禁止しているところがほとんどだろう。

八ケ岳南麓の山梨県北杜市。迎えに出てくれた田中静正(しずまさ)さんの軽トラックについて、山の家に向かった。山林の別荘地は、JR駅やインターからも驚くほど近い。クリやコナラ、ヤマザクラ……雑木の茂る林のくぼ地に、めざす家が見えてくる。車を止めると、さっそくたき火だ。

「ここは周囲が農地や区有林だし、別荘はあっても人の住む家は遠い。たき火をしても、夜中にチェーンソーを使っても、まったく問題ないんです」

薪は、家のまわりの倒木を使う。石を敷き詰めて作ったたき火用の炉は、敷地内に3カ所もある。重い薪を運ぶのはけっこうな手間。あちこちに炉があれば、切った場所の近くで燃せるというわけだ。

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多くの木々に包まれて建つ家

友人とともに、盆栽や庭造りのセレクトショップ「風雅堂」を経営する田中さんが、ここで暮らすようになったのは10年前。ふだんの仕事は東京だが、生活の拠点は、この山の家だ。広い土地には、雑木に交ざって、ツツジやオオデマリ、ハナモモ、フウチソウ、ナルゴユリ、ナンキンハゼなどたくさんの庭木や草花もある。すべて、田中さん自身が植えたものだ。春になれば、物置小屋の裏に並べたホダ木にシイタケも出る。

20代のころから、母親の実家があることからなじみ深かった山梨県に別荘を持った。けれども、それはあくまでも遊びのためのセカンドハウスであり、休暇として訪れるだけ。3カ所目のこの土地に至った45歳の時、ついに「山住まい」に踏み切った。

「生まれも育ちも東京の下町。当時は仕事でもあれこれあって、どうせ住むなら好きな山がいいな、と」

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たき火を囲むベンチも自ら作った

仕事で忙しい日は都内の借家で寝泊まりし、ゆとりのある日や週末には軽トラックを駆ってわが家に戻る。片道2時間強の通勤は確かに大変だけれども、豊かな自然の中で過ごす心地よさは、なにものにも代えがたい。

「この暮らしは本当に正解。土地の高い東京で家を持つことはないですよ。若い連中にも、そう言って勧めているんです」

商業コンサルタントとして活躍する妻も、都内に事務所を持ち、国内外の出張もしばしばという多忙な日々。仕事中心の毎日は別々に生活し、互いに時間の合う時に、愛犬を連れて山の家で合流する。

「子供がいないからできることかもしれませんが」と言いつつも、そんなゆるやかな関係がちょうどいい。

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