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埼玉県内の緑に囲まれた保育園の一室で週に2回、ユニークなクラスが開かれる。子供たちが楽しみにする「デミ先生の絵画教室」だ。絵画といっても、絵を描くだけではない。紙を切ったり粘土をこねたり、段ボール箱を組み上げたり……。いわゆる図画工作全般。手を使ってものを創作する授業だ。
12月のある日、4歳児を対象にした指導の様子を見学させてもらった。明るい保育園の玄関や廊下に飾られた子供たちの絵や工作は、どの作品ものびのびとして実に個性的だ。2階の教室をのぞくと、30人近い子供たちがにぎやかにクリスマスリースを作っている。 「はい、みんな見て。こうやってね、モールをひっかけたらクリクリっておひねりするんだよ」

部屋の中央に立った出店久夫(でみせひさお)さんが、一人ひとりの顔を見ながら話す。
「もう説明したからね。二回は言わないよ。あとは自分でやってみて」
新聞紙に色紙を巻いて作った輪に、自分でこしらえた飾りを張り、リボンやモールをつける。どの子も夢中で手を動かす。部屋の隅で見ている私たちに話しかけてくる子供もいる。
「これはね、さっちゃんが描いたの」「ねえ、どっちの色がいい?」「私の、もうできたよ」……。
皆、とても手先が器用だ。のみこみの早さや、一人ひとりの独創性にも驚かされる。
「本物の体験」を指導の柱とする陽明保育園が、プロの美術家である出店さんを講師に絵画教室をスタートして、すでに26年になる。その成果は大きく、今では毎年、東京・青山のギャラリーで「陽明の子どもたち展」と称した展覧会も開くほどだ。

出店さんの毎日は、昼間は子供たちに造形を教えることが中心だ。陽明保育園では4歳児と5歳児の教室を担当するほか、週末には保育園の部屋を使って、小学生までを対象にした「アトリエデミ」も開く。そのほかに保育園での教室が2カ所、幼稚園が1カ所。ときには美術館などでのワークショップもある。毎回、何を作ってもらうかテーマを考え、手順を整理し、必要な材料を整える。子供を前にする時間よりも、準備にかける時間は膨大だ。妻の紀子(のりこ)さんと一緒に、夜遅くまで材料の用意に追われることも珍しくはない。
けれども、日々はそれだけでは終わらない。毎晩、作業がひと区切りついたら、自宅から車で20分ほどのアトリエに向かう。出店さん自身の作品を制作するためだ。子供たちに親しまれる「デミ先生」は、写真の技術をフルに生かした独自の表現で知られる現代アート作家なのだ。

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